第8話 道に迷ってる後輩がいたから先輩ムーブしてみた
翌朝。
俺より早く起きていたアリシアが、早速今日の準備をしていた。俺の机になぜかアリシアの教科書が山積みになっている。
「えっと…今日は…」
日課表を見て、いる物といらない物を整理している。偉すぎるだろ。
「おはよう…」
「あ、ロワ起きたー。おはようー」
一瞬だけ俺の方を向いた後、再び教科書に視線を落とすアリシア。俺はそのまま体を起こし、久しぶりについている寝癖を手触りしながら直す。
「ロワさー。まさか毎日こんななにも目覚ましとかそういうのなしで起きてる系?」
アリシアがいきなり話しかけてきてビクッとした。やはりまだこの部屋に自分以外の人がいるのに慣れていない証拠だ。
それでも俺はなにもなかったかのように答える。
「目覚ましはある。でも、なぜか鳴る前に起きるっていうか…」
ちょうど目覚ましが鳴ったため、スイッチをオフにする。
「私、まだ転校生の学園説明が全部終わってないから先行くね」
「おう」
現在時刻7時40分。諸連絡は8時30分からのはずだからだいたい1時間早い。しかも、魔法で行くと考えると7時42分には学園に着いているだろう。
そんなことを考えつつ、俺はキッチンに向かう。すると、そこに一皿の料理が置いてあった。
『ただで住むつもりはないから!』というメモ書きとともに、程よく焼かれたトーストスクランブルエッグが添えられている。
「料理はできるけどな?」
自分以外は誰もいない、いつもの部屋で呟いた。俺はそれを温めると同時に軽くサラダを作るだけ。
食べてみると、どれもおいしい。自分が作ったサラダとトーストはもちろん、スクランブルエッグも前に作ったときと比べてどこか甘みがあるように感じた。
準備も済ませると、思ったよりも時間が余ったため、久しぶりに歩いて行くことにした。
普段見ることのない景色、人など。意外と新鮮なものが多かった。一ヶ月に一回は歩いて行ってみるのもいいかもしれない。
俺は歩きながら、一人で勝手に頷く。
歩き始めてからしばらくして、道端で困っている様子の少女を見かけた。
よく見ると、うちの学園の制服を着ている。
(新入生、か)
確か、プリントには今年から先輩だから困っている新入生がいたら助けてあげる的な感じのことが書いてあったが正直、めんどくさいの一言である。
俺はそのままその子をスルーした。なにもなかった、見えなかったかのように。
(だけど…)
俺の通る通学路はあまり人が通らない。なぜなら、寮は学校の裏側にあるからだ。皆、たいていは正門から入る。ということは寮生は裏門から入ることになるのだ。
居ても立っても居られないのと、スルーした罪悪感を感じ、俺はあの子のいるところまで戻った。
同じところに立っていて、地図を見ている。
俺は恐る恐るその子に近寄り、声をかける。
「君、道がわからないの?」
顔を上げて、俺の方を見た。背が俺の胸あたりくらいまでしかなくてあまり高くない。しかし、この銀色の髪に青く透き通った目。どこかの
その子は半泣き状態で俺にすがるように言った。
「えっと…道を教えてくれませんか?!」
地図を見てもわからなかったのだろうか。ほぼ一本道なのに。
とりあえず、今はこの子をなんとかするべく俺は
「やっぱりね。そのまま後ろついてきて。それで道を覚えながら進もう」
と言って前に進むと、彼女は地図を直してそのまま忠実に俺と一定の距離を取りながら後ろを歩く。
無事、学園まで到着した。これで道も覚えてくれるといいだろう。
「あ、ありがとうございました!」
「大丈夫だよ」
俺は微笑んでいうと、その子は一年生の校舎へと向かった。
少しのタイムロスのせいで結局いつも通りの時間に着いた。その後俺も、自分の教室に向かった。
俺は、先輩らしくできていただろうか。
そんな不安が頭を一瞬よぎった。
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8パート分も投稿してようやくわかったのですが、カクヨムって前書きと後書きのシステムがない?ですね!めちゃくちゃどこだろう…って探してしまいました。
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