第3話

 帰宅途中。

 やはり、電車。

 トンネル通過中。


 今日も仕事を頑張りました。

 どんな仕事をしましたか?

 思い出せない。

 僕。

 真面目なだけが、取り柄の僕。

 へこむ。


 帰宅途中。

 電車の中も

 幽霊さんたち。

 多数。


 赤ん坊を抱いたお母さん幽霊も。

 おじさん幽霊も乗っています。


 今日も一日、ご苦労様です。


 帰宅途中の電車。

 まるで。

 トンネルしか走っていないのかと、思うほど。

 トンネルの中ばかり。


 その時。

 突然。

 電車が急停止。

 僕たち乗客は、投げ出され。

 叩きつけられました。


 赤ん坊を抱いたお母さんも。

 おじさんも。

 全身強打で。

 

 思い出しました。

 眼鏡の傷。

 この時の傷。


 その日は、帰りの電車も。

 可愛いあの娘と。

 同じ電車。

 同じ車両。

 とてもついてる嬉しい一日。

 可愛いあの娘は。

 僕の隣に。


 しかし…。


 あの事故。

 とてもついている僕から。

 最もついていない僕へ。

 変身。


 思い出した瞬間。 


 バキバキと体中の骨が折れる音が、僕の身体から聞こえ。

 耐え難い痛み。


 肺が潰れ。

 腎臓が形を無くし。

 腸が、体から飛び出し。

 心臓に、肋骨が数本、突き刺さり。

 肝臓が、ちぎれ飛んでいく様子を僕の視界が捕らえました。



 僕は、可愛いあの娘の身体が、飛ばされ、打ちつけられる寸前。

 僕の身体で、庇いました。

 彼女と僕の体重を引き受け。

 電車のスピードで、叩きつけられた僕。

 身体は、原型を失いました。


 僕の。

 内臓さん。

 骨さん。

 ゴメンナサイ。

 咄嗟に、あの娘をかばってしまったのです。

 許してね。


 眼鏡屋さんの可愛い彼女が、言っていた。

 この世の真実を見せてくれる眼鏡とは。

 それは、電車の中にいる幽霊さんを見つける眼鏡ではなく。

 僕自身が、すでに幽霊だと教えてくれる眼鏡でした。

 

 しかし…。


 この世ですか?

 あの世ですか?


 悩む僕。


 この世プラス?

 

 死んでしまったのなら。

 仕方ありません。

 未練は、いろいろありますが。


 皆さん。

 あの世へ旅立ちましょう。


 電車の幽霊さん。

 行き先。

 天国で、お願いします。


 






 

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