仕事内容はストーカーではないらしい

「おいエロガキ」

「...はい」

こえー!今までにない程怒ってるぞ。あの時自分を殴っていればこうはならなかったかもな。

「まあまあ落ち着いて?」

「なんでアンタが勇くんと一緒に居るのよ!」

「勇凛君がよくゲームしながら通話してるの見てたでしょ?あの相手は私なの。どっかの誰かさんと喧嘩したって言うから相談に乗ってあげようと思って」

「直接会わなくてもいいでしょ!てかなんで知り合いなのよ!」

「これも私の仕事なの。ほいこれ見てみ?何処が違うでしょう?」

契約書を出しながらアルテミスに問題を出す虹色。

「知らないわよそんなの...あっ!なんか達って増えてる!」

気づけるのすごいな。俺だったら絶対にわからない。

「そうよ。ゼウス様が加えたの。可愛い娘が心配だって。」

「パパ...ちっ!余計な真似を...」

虹色の言う通りの反応だ。

「それはわかった。でもなんでアンタが担当なのよ」

「それは、あなたと同期で昔からの知り合いだからだって。今じゃ私の方が仕事の立場上上だけど」

「昔からの知り合いだったんだ」

「...まあね。私が働き始めるのが早かったからね」

要わからんがそういう事らしい。そもそも神様の仕事ってなんだ?ストーカーが仕事?そんなわけないだろ。

「その顔はどんな仕事しているんだ?って思っているね。ちょっと難しい話するけどいい?」

「それは有難い。ストーカーが仕事だと思ってたから助かる」

「どっちが喋る?」

「アンタが喋って。それに私が補足する」

「了解。眠くなったら言ってね?膝枕してあげるから」

大事な話の前に誘惑される。行きたいけど我慢だ。ここで行ったらアルテミスになんで言われるかわからない。

「この世界は大きく分けると三つに分かれるの。ゲームとかアニメっぽいでしょ?天界と地上、そして魔界。そして私とアルテミスは天界出身なの。今回は天界について話すね」

現実味のない事喋り始める。でもこれが世界の真理ってやつなのかもな。なんかカッコいいな世界の真理って。

「天界っていうのは簡単に言うと天国なの。そこで神様達が暮らしてるの。」

「魔界はその逆で地獄って覚えとけばいいよ」

「そこで神様達が仕事するの。役割は神話ごとで分かれていて私達は地上メインで活動してるの。他には北欧とかエジプトとかが有名かしら?」

「地上で何の活動をしてるんだ?契約だけが仕事じゃないだろ?」

現状で思った事を口にしてみる。

「私達の地上での主な仕事は人々と契約しそれを叶える事。もちろんただではないけど。それ相応の代償を支払ってもらう。」

「悪魔みたいだな」

「確かにそうなんだけどね。二つ目的があるの。一つ目が地上の偵察魔界側や天界側の誰が裏切って地上を支配する事を防ぐの」

「魔界と天界は仲がいいのか?」

「そこそこね。お互いに干渉し合わないようにしてるから問題とかは特にって感じ」

「まあ、一度もそんな事起きた事ないんだけどね」

保険って事か。そうじゃなくてギリシャ神話に無理矢理仕事を与えてるだけかもな。

「...君のような感のいいガキは嫌いだよ」

おーっと神様パワーでバレたみたいだ。

「本題に戻すね。もう一つがメインの方なの。それが、人々に神様と言う存在を忘れさせないようにする為」

「単純に神様が存在していた事を忘れられると不都合が生じるの。人も神も対して変わらないのよ」

不都合ね〜。難しいこと。

「そういえば代償ってなんだ?」

お母さんが何を代償にしたのか気になる。

「契約によって変わるんだけどルールがあるの。契約した結果、歴史を大きく変えてはいけない。それがルール」

「それって曖昧じゃないか?どんなに小さな事でも変わる可能性だってあるだろ?」

「よく言われるわ。でも天界には未来を全て知る者がいてその神によって判断されるの。」

「一人だけなのか?」

「何人かいるけど大変みたい」

俺の存在ってもしかして...

「歴史は大きく変わらないって事。もしくは

全て知っている神が特に問題はないって判断したかのどっちか」

ちょっと悲しいな。実は後にビックな男になる事はないらしい。

「それぐらいかな、喋れる事としては。何か質問はある?」

「一つだけ。俺のお母さんが支払った代償って何?」

命とか記憶とかではないだろうな。多分。

「残念だけどそれは教えられないの。これも決まりなの。」

...そっか。それは残念だ。いつか天国で会ったら聞こう。

「...聞け...よ」

「なんか言った?アルテミス?」

「...何も」

鼻を啜る横からする。見ると虹色が苦しそうな顔をしている。

「気にしないで」

優しい声音でそう言った。神様だけは真実を知っているのかもな。人は悲しいけどとても非力なようだ。全てを知るにはまだまだのようだ。

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