ボケに対する姿勢だけはプロな自称神様

 と、まあこんな感じの一週間を過ごして来た。そして始まる月曜日。

 疲れが完全に抜け切っていない。今にも閉じてしまいそうな目を無理矢理開き朝食の準備と弁当の用意をする。

 その為平日の朝は忙しい。打って変わってアルテミスは起きるのが遅い。

 だが、行ってらっしゃいのキスするの、何てバカな言って以来、今は早く起きる練習中らしい。どうやらこちらが学校に行く事をすっかり忘れていたそうだ。

 ストーカー失格だろ、それ。てか、発想が幼稚園生なんだよな。

 見た目はバリバリの大人のお姉さんって感じなのに。そんな事を考えてると、扉の開く音が聞こえる。昨日より少し早くの起床だ。


「おはよ〜」


 気の抜けた挨拶が飛んでくる。


「おはようさん」


 こちらは欠伸混じりの声で挨拶する。そして同時に大きな欠伸。どちらも朝に弱いらしい。


「今日は何かな?」


 可愛らしい声で台所を覗くアルテミス。着ているパジャマはずれていて、綺麗な肩がこちらを覗く。


「ちゃんとパジャマ着てから来てください」

「着てと来てを掛けてるの?朝から絶好調だね〜」

「掛けたつもりはありません。顔洗ってビシッとしてください」

「うりぃぃぃ〜」


 あんたは吸血鬼か。自分の種族を考えて発言しろよ。本当に神様かすら分からないから吸血鬼の可能性は捨て切れない。

 朝から会話が絶えない。一年間、朝は誰とも会話せず過ごしていたから、意外と楽しいと感じてしまう。

 時間が経ち朝食が出来たタイミングで戻ってくる。


「只今帰還したであります!」

「朝から元気だなお前」


 僕は軍曹では無いぞと言いながら、朝食を並べる。


「今日は目玉焼きなんだね〜」

「楽だからな」


 電子レンジで作れるから、別の事と並行しながら出来るから朝食に良く出す。


「「いたただきます」」


 二人で揃えて挨拶するのが日課だ。向こうが揃えよ?と言うから仕方なくだ。でも、悪く無いなとは思う。


「弁当、作っておいたから好きな時に食えよ」

「愛妻弁当だ!」

「性別が違うだろ。後、弁当に愛はこもってないから違う。弁当冷たいし」

「冷蔵庫に入れてるからだよ〜」

「ちっ、バレたか。黙って食え小娘」

「扱いが酷い!」


 朝からのボケ合いで目が少し覚める。以外と楽しい朝食は終わり、片付けをする。お皿洗いぐらいは任せてよ、と言うから任せている。

 料理が絶望的に出来ないが皿洗いは人並みの様だ。神様なのに。そう思いながら、学校に行く支度をする。

時間は丁度七時三十分。家から出る時間だ。

靴を履き、家を出ようとすると奴が必ずやってくる。


「待ってよダーリン、行ってらっしゃいのキスしてないよ?」

「疑問形にするな。毎日してるみたいになるじゃないか」


 した事なんて一回もないのに、さも当たり前かの様にキスを求めてくる。


「いつか来る行ってらっしゃいのキスの時を楽しみにしているわ。」


 カッコつけて言っているのが妙に腹立つ為、セリフを無視して家を出る。


「行ってきます。」

「行ってらっしゃい!」


 こちらの挨拶に元気良く返してくれる。今日も一日頑張ろう。そう思い家をでて階段を降りていると後ろから


「気を付けてねダーリン」


 なんて聞こえるけど知らない神様だから無視しよう。こんな事が急に起きているからご近所さんの立話のネタになっているのはまた別のお話らしい。

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