第7話 スキル


何度か石を放っているうちに、イノシシの耳の辺りにヒットしたようだ。

「ブヒィー!!」

イノシシが叫ぶと、ヨロヨロとしてふらつき、横になろうとする。

!!

チャンスだ。

今しかない!


俺はそう思うと、急いで木を降りる。

鼻を動かしながら、起き上がろうとしているイノシシの近くまで来た。

俺は持っている鉈を取り出して、イノシシの耳のところを思いっきり叩きつける。

ドン!

「ブヒィー!!」

ドン!

ドン、ドン、ドン・・。

「はぁ、はぁ、はぁ・・」

俺は無我夢中だ。

イノシシがビクビクとしながら、よく動けないようだ。


俺はバックパックから杭のような枝を取り出す。

可哀想だが…俺は覚悟を決め、心で叫ぶ。

すまない!

イノシシの耳の下のところにそっと当てて、鉈で杭を打ち込む。

ドン!

「ブヒィー!!」

うげぇ・・耳元でイノシシの叫び声が聞こえた。

ドン!

「ブ、ブ・・ィ・・」

ドン!

ドン!

もう一つ杭を取り出して、1本目の横に打ち込む。

ドン!

ドン!

・・・

・・

4本の杭を連続して打ち込んだ。


イノシシがビクビクとしていたかと思うと、そのまま静かになり動かなくなった。

すると、突然俺の頭の中に声が響く。


『レベルが上がりました』


!!

俺はうれしさよりも、精神的な疲れでしんどい。

身体は不思議と軽い感じがする。

ステータスを確認しようかと思ったが、取りあえず安全なところまで移動したい。

俺は来た道を引き返す。

15分も歩くと、遠くで車の音が聞こえるところまでやってきた。

携帯電話を取り出して、時間を確認。

時間は10時25分。


俺は近くの岩の上に腰を下ろす。

「ふぅ・・とにかく無事でよかった」

俺は飲み物を飲んで深呼吸をする。

落ち着いて来ると、妙な感覚が沸き起こる。

生まれて初めてイノシシなどの大きな生命体を倒した。

倒している際中は、それほど感じなかったが、これが命を奪う感覚なのだろうか。

・・・

魚料理もそのうち慣れてくるし・・。

俺はそんな風に考えながら気持ちを整理していく。

不思議とすぐに落ち着いてきた。


さて、ステータスを確認してみよう。

ステータスオープン。


ハヤト

レベル:4

HP :38/58 

SP :52/52 

力  :58     

耐久 :48     

敏捷 :55     

技能 :62    

運  :61   

スキル:選択可


スゲー・・って、凄いのか?

とにかく一気に2つも上がったぞ。

さすがイノシシだな。

ん?

スキル・・選択可って、何?

俺はすぐにスキルのところをタッチしてみる。

スキル画面の上にもう1つの小さな画面が表示される。

スキルの選択をしてください、とある。

「ナビ」スキル枠2つ消費

「探索」スキル枠1つ消費

「隠蔽」スキル枠1つ消費


そっか・・確か、スキルって3つまでのはず。

取りあえず、表示スキルをタッチしてみる。

タッチする順に文字が強調され、短い説明がある。

・・・

「ナビ」は案内する機能らしい。

他も文字通りの説明だけだ。

俺は無言で見つめる。


そもそも全部は取得できないし、枠でいえば1つオーバーだ。

どうしようかな…。

「ナビ」って2つも枠を使うけど、これって凄いスキルなのかな?

う~ん・・探索、隠蔽・・。

どのスキルも欲しい。

「ナビ」が無難かなぁ・・。

俺はしばらく迷っていた。


よし、ダメでもまた取得し直せばいいし、何とかなるだろう。

そう思い、「ナビ」をタッチ。

「ナビ」の横に文字が表示される。

「これでいいですか?」

俺は妙に可笑しくなった。

「フフ・・今度は、Yes or はい、じゃないんだな」

そうつぶやくと、俺は「ナビ」をもう1度タッチする。


『おめでとうございます』

!!

俺の頭に声が響く。

な、何だ?

『ハヤト様、ナビを選んでいただき、ありがとうございます。 これからは、わからないことがありましたら、お答えできる限りお答えいたします』

「え? 何これ・・いや・・神様の声じゃ・・ない」

『はい、私はナビゲーションシステムです。 初心者の方のご案内役です』

「ナビゲーションシステム?」

『はい、そうです。 何かこの仕様でわからないことはありませんか?』

ナビが元気よく聞いてくる。

まるで生きている人と会話しているようだ。

「う~ん・・そうだなぁ・・あ、スキルの上限って3つまでなんだよな?」

『3つまでのスキル上限、よくご存知ですね』

「えっと・・神様に聞いたんだよ」

『なるほど・・了解しました』

「それから・・ナビって呼んでいいかな?」

『はい、どうぞ』

「じゃあ、ナビ・・この世界で俺の他にステータスを持ったやつってどれくらいいるの?」

『お答えできません』

「は? どういうこと?」

ナビがはっきりと否定する。

『はい、システムの根幹に関するようなことはお答えできません』

も、もしかして・・俺って、選んではいけないスキルを選んでしまったのか?

こいつ、ポンコツか?

まぁ、慣れてきたら他のスキルに変更してもいいかもな。

俺がそんなことを考えていると、ナビが語りかけてくる。

『ハヤト様、スキルですが、交換が可能です。 そして、また最初からのスタートとなります。 ですが、交換されたり削除されると、2度と取得できないスキルもございます。 私はその1つです』

こ、こいつ・・俺の思考を読んでいるのか?

『ハヤト様、決して思考を読んでいるわけではありません。 流れ的に推測している次第でございます』

・・・

絶対に読んでるだろ、これって。

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