第2話 創られた世界(序2)


取りあえずメールを放置して、俺は眠りにつく。


時間は4時50分。

俺の朝は早い方だ。

起きて、布団をたたむ。

軽く口をすすいで水を飲む。

朝食は決まっている。

まずはお茶を飲み、味噌汁を1杯。

後はコーヒーを飲み、ヨーグルトを食べて終わりだ。


さて、昨日の妙なメール・・夢じゃないよな?

俺はそう思い、携帯のメールボックスを見る。

受信箱にやはりある。

・・・

いったい何なのだろう?

送り先もないのに届いているメール。

高度な詐欺集団でもいるのだろうか。

わからないが、携帯も普通に動いているようだし、取りあえずは放置でいいだろう。

削除できないし。



俺は仕事という仕事はしていない。

働いていないわけじゃない。

取りあえず昼過ぎに出勤する。

午前中は何をしているのかって?

自分のための時間だ。

親が亡くなった時に残してくれた遺産があり、それを投資に回している。

配当が年に100万円ほどある。


さて、仕事だが、21時30分頃までとあるドラッグストアで働いている。

アラフォーともなると、普通に就職はない。

世間では資格、資格とうるさい。

自分で言うのもなんだが、俺は普通に勉強はできる方だと思う。

登録販売員などという資格も、2ヵ月ほどの勉強で取得できた。

だが、この勉強が俺の一番嫌いなタイプだった。

ただの暗記。

そして問題はこちらの選択ミスを誘発するような質問ばかり。

ぶっちゃけ、数学のような問題の方が張り合いがある。

まぁいい。


この登録販売員の資格・・実際にはほとんど役立ってないんじゃないかとも感じる。

まぁ資格など、試験も含めて天下り組織の資金じゃないかと疑っている俺だ。

そして、そういうシステムを構築する立場にある人たちの匙加減さじかげんで、国民の人生が決定づけられる社会。

それが日本社会だろう。

まぁそれで生きて行けるのならいいだろうとは思う。

だが、格差が生まれて、努力だけではどうすることもできないのがしんどい。


「お疲れ様でしたぁ~」

ドラッグストアのみんなで挨拶を交わしながら、今日も終わった。

この会社はきっちりとしている。

サービス残業は皆無だ。

待遇もいい。

時給も1000円は超えている。

アルバイトとしては十分だろう。


ただね・・食べるために働くというのがしんどいと感じる。

これでは一生自分のために働くことができない。

どこかの政治家が言っていた。

ベーシックインカムを導入すると。

大賛成だ。

何故なら、食べるために働くことから解放される。

妙なコメンテイターが、それじゃ働かくなる人が増えるじゃないですか、と。

逆だ!

俺はテレビ向かって言葉を出していた。

みんなが自分のために働いてお金を得ることができる。

本当の仕事ができるんだ。

それにブラック企業なんかで働かなくても食べられる。

そして、自然とそんな企業が淘汰されていくだろう。

また、社会全体にお金がグルグルと回るようになる。

大きな経済が出来上がると、自然と海外からも投資が来るだろうと、ひそかに思ったものだ。

まだ、その社会は程遠いようだが。


俺は自宅に帰って来て、シャワーを浴びる。

軽く飲み物を飲むと、携帯を確認。

働いている間は携帯を見ることができない。

うわ・・メールが多い。

39件。

順次メールを確認していく。

・・・

特に重要なものはない、2件を除いては。

重要と言ってよいのかどうか。

例の、送付先がないメールが2件届いていた。

お昼の12時に1通。

『残り時間12時間です。 お早いご決断を。 こんなチャンスは2度とありません。 決定事項を受け入れますね? Yes or はい』

あなたの世界の神と呼ばれるものより。


続いてもう1件。

21時。

『お急ぎください。 残り3時間です。 あなたが決定しなければ、誰か他の人に権利が移行されます。 本当にもったいない話です。 決定でよろしいですね? Yes or はい』

あなたの世界の神と呼ばれるものより。


俺はメールを見つめていた。

・・・

いったい何なのだ。

怪しさ150%じゃないか。

ただ、送付先がないのが理解できない。

アドレスが存在しないのに、送られてくる。

いったい何だ?

プログラムの知識なんかないし・・ふ・・ふわ・・ふわっくしょん!

思わずくしゃみをしてしまった。


あ!!


くしゃみと同時に携帯を落としそうになった。

思わず手が出て携帯を掴もうとしたのが悪かった?

いや、後でそれが良かったと思えるが、その瞬間は最悪な気分になっていた。

携帯を落とさないように手が出たまでは良かった。

だが、うまくキャッチできない。


手の平のところでフラフラとして安定しない。

「おっとっとと・・」

ガシッと携帯を掴む。

ピ!

携帯から音が聞こえた。

Yes or はい、の欄に親指が触れていた。

そして、その項目のところの色が白く変わる。



俺はそれを見ながらドキッとしていた。

し、しまったぁぁぁ!!

タ、タッチしてしまった。

あぁ・・どうすんだよ!

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