守ること-1

 一同は堤防の付近を歩いていた。南側この日は穏やかで、掛瑠すら鼻歌を歌い始めて警戒心が薄くなったその時、ボールが上空を通り過ぎて海の方に飛んでいってしまった。


 生徒A「あ、」

 生徒B「ヤバい」

 ??「何や?」

 

 光隆はこれまでかなりのんびり歩いていたが、猛ダッシュしてボールの方向に向かった。だが、ボールは海に着水してしまう。このままでは光隆が海に落っこちる…と思った瞬間であった


 光隆「ぬぉぉぉぉ!」

 ??「え!?」

 生徒A「海を」

 2人「飛んでる!」

 光隆「取ったぞー!!」


 光隆は得意なウォータージェットでボールをキャッチ、そして何事もなかったかの様にボールを持って陸に上がっていた。

 学校からは歓喜の声が上がり、サッカーをしていた子供達に感謝された。

 その後、光隆と陸唯はサッカーしている子供達に混ざり遊び始めた。

 光隆はスピードで相手の足止めをしてくるが、ボールを蹴ろうとしてズッコケてしまう。一方陸唯はそれをうまく掬ってゴールへと向かう。

 それを見ていたチームのリーダー格たる延岡泰郎が2人に話を掛ける。


 ??→泰郎「君ら凄いわ。あっしは延岡泰郎ここのキャプテンやっとる。君らも入らないか?」

 光隆「あぁ、でも俺パス。」

 泰郎「何でや?」

 光音「光隆は走るとか泳ぐとか、単純な動作だけなら大丈夫なんだけど…バスケとかサッカーは昔っから不向きで…」

 泰郎「しゃーないしゃーない、向き不向きあるで。」

 陸唯「俺は入りたいけど、別の学校だけど良いのか?」

 泰郎「問題ないで、あんたらとワシはもう友達や!」

 掛瑠「友…達?」

 泰郎「友情は付き合った時間とは関係ないねん、ほな行くとこあるんやろ?付き合ってもろて悪かったな」

 光隆「大丈夫だ、」

 陸唯「俺の電話番号書いたから、次練習するとき呼んでくれよ!」

 泰郎「おう、ほなまたな!」


 街を歩けば新たな発見があり、新たな友情が芽生える。興一は理想の町に一つ近づけたのだろうかと、心の中で思った。


……………

……


 光隆「その自然教室?泰郎も誘っていい?」

 陸唯「いいだろ、興一先生!」

 興一「参った…調整していた自然教室、一人増やそうか…いや、正式な生徒じゃ無いし…どうしよう」


 興一が頭を抱えはじめた瞬間、カリブディス船内全体に警報音が響く。


 祐希「レトキシラーデ、再接近との事!」

 光隆「何だと」

 光音「来るのね、あの化け物」

 掛瑠「…!?」


 興一「…畏まりました。光音、お姉さんから」

 光音「何の様?」

 景治「何かあったら、圧縮空間筒を空に掲げてほしい。そしたら、LA15が現れる。厳密には圧縮空間筒に格納されているLA15が出現する。本当に、いざと言う時しか使うなよ」

 光音「それってどう言う…?」


 電話が切られる。景治は前線指揮を担う将官のお手並み拝見とばかりに総司令の席に座っていた。


 イズナ「これでいいんデス?」

 景治「あぁ…戦況は?」

 要「現状、東からの敵を誘導するのに無人艦を浪費してます。無人艦艇損耗率4割を越しました」


 今度は夜戦、敵は暗視…と言うより熱源を探知すべく生体赤外線センサーが付いている様なものであり、条件は同じ。だが物量で押されてしまっている。


 茜「あちゃあ…物量は有限なんだから、うまく使いなさいって。」

 澪「誘導は無人VTOLに肩代わりさせ、西リニアカタパルトからカルメアを潜水状態で出撃。5番フロートとの間の水道を使い進撃させる、その場合機関始動から荷電粒子砲チャージ時間何秒?」

 里帆「に、20秒です。」

 澪「バトルフィールド形成、敵が側面に回るまでは?」

 要「約1分は必要です」

 畝狩学「敵中心、無人艦に釣られ要塞砲撃陣地の射程圏内に入ります」

 澪「荷電粒子砲、撃ち方はじめ。それからトリウム溶融塩炉型カルメア級、準備出来次第前進せよ」


 白熱する戦場、洋上の複数隻のトリウム溶融塩路搭載艦を追い回すレトキシラーデ。戦場が、街から見える海域にて起こっていた。


 店主(泰郎の叔父)「何や…」

 泰郎「怖いねん…何度この音を聞こうと、怖いねん…」


 その様子は機関停止状態のカリブディスからも見えていた。


 チョウナ「レトキシラーデと東亜探題守備艦隊の戦闘!!」

 陸唯「何でワクワクしてんだよ、俺らもこれかなり危ないぞ」

 チョウナ「あ!カルメア級!海護財団の主力艦が来た!」


 ヴァルター機関を用いて敵に接近、溶融塩炉再始動後20秒で荷電粒子砲を発射可能であった。


 光隆「あれ、俺たち…何で奴らに見つかってないんだ?あの艦隊も」

 光音「戦闘境界面、彼らが認識できる空間。その外からの攻撃は殆ど通用しない反面、内部に入れば攻撃出来るが反撃される。そんな領域。私たちがいるのはその外だから」

 光隆「何で…知ってるの?」

 光音「母さんの本に書いてあった」


 戦場を不安そうに見守る一同、甲板上に立つこの男は戦況を…いや東亜探題守備隊の守備戦力が減り続けている状況を憂慮していた。


 興一「…まずいな」

 チョウナ「このままじゃ、東亜探題の守備隊が…」

 陸唯「何がどう不味いんだ?」


 彼がそう返した途端、カリブディスにビームが直撃する。

 敵の砲撃で折れてしまったレーダーが陸唯の頭上から落ちてきて、脳天にぶつかる。


 陸唯「ぐあ…!?」

 チョウナ「陸唯!?」

 興一「しまった、戦闘境界に入ってしまったか」


 チョウナに陸唯の介抱を頼み、更に医療スタッフを呼び付け彼を任せ興一は前線に赴こうとしていた。


 興一「CDC-カリブディス。守備隊は損耗大きい、僕が行く!!」

 要「先輩自ら!?」

 澪「総司令!!」

 景治「死ぬなよ、弓張准将」

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