第6話

 結局四時限目の内容なんて頭に入らなかった。『予知夢』のおかげで知識はあるから別に良かったのだが。


 昼休みになり、俺と明人あきとはいつも通り食堂へ向かう。昨日の約束通り明人あきとの分の食券を買ってついでに券も交換しておいた。


 先に席を確保してくれていた明人あきとの前にカレーうどんを置く。


「お、サンキュー」

「あぁ」


 いただきますと互いに手を合わせてから弁当の蓋を開けた。


「なぁ、智也ともや

「ん? どうした?」

「俺の杞憂だったら別にいいんだけどさ」


 そう言って明人あきとがうどんを啜る。咀嚼し、飲み込んでから俺の方を見た。


「何かあったよな。『予知夢』関連か? それとも清水しみずさんか?」

「何かある風に見えるか?」

「長年一緒にいるんだ。分かるよ」


 言いたいことが終わったからか、明人あきとがまたうどんを啜り始める。そのマイペースさが俺を安心させた。


 俺はさっきの時間に考えていたことを素直に話す。明人あきとはうどんを啜りながら俺の話を聞いてくれる。


 全て話し終えると明人あきとが口を開いた。


「確かに怖いな。夢は『記憶の集まり』で主に情報の整理のために見るもの……らしい。だから今の智也ともやの話は普通ならおかしい。でも、智也ともやの夢は『ただの夢』じゃないだろ?」

「一応、『予知夢』だな」

「だったら一回でいい。その『予知夢』に抗うのはどうだ? そしたら夢の通りに100%なるわけではないと証明できるし、仮に死ぬ夢を見た場合回避できるだろ?」

「なるほどな。確かに『予知夢』に抗ったことが一回もなかった。早速試してみるよ」

「おう! 頑張れよ」


 明人あきとが拳を突き出したので自分の拳を合わせる。


 本当に明人あきとに相談してよかった。さっきまで悩んでいたのが嘘のように心が軽い。


 やっぱり持つべきものは最高の友達だな。

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