私は主人公じゃない

こたこゆ

主人公じゃない私の話

物語には、主人公がいる。中学の国語の先生によると、『主人公とは物語の中で大きく変わった登場人物』を指すらしい。

話を変えて。

よく、人生を本にたとえることがある。生まれた瞬間が1ページ目。死んだその時が最終行。

もし人生がストーリなら、ほとんどの人は主人公だ。みんな、生まれてから死ぬまでに、大抵は何度も変わるのだから。

でも、それとは別に、“主人公”はやっぱりいる。違いは何なのか?正解は知らないけれど、私はスケールや、輝かしさのようなものの違いだと思う。

私は、どう考えたって主人公からは程遠い。

小さい頃は無邪気に思っていた。願っていた。わたしにも、ふしぎな力やとくべつがあればいいのに、と。本に出てくる主人公達は、みんな、人と違う何かを持っていたから。魔法や、人を惹きつける美しさ、驚愕するほどの身体能力。私にも、特別があれば主人公になれると思っていたのだ。奇跡と運命に満ちた登場人物に。もちろんそんなのが、今になれば幻想だったのだとわかる。

私がそれを知ったのは、小4。少し早く私にそれを悟らせたのは、皮肉にも望み続けた“特別”だった。

私は、自分の環境においての主人公がわかる。自分のクラスや部活など、一定以上の人数と話題を持つ集団内での主人公。彼らは、どこか輝いて、私には見えた。彼らだって、広い世界でならただの脇役なのかもしれない。違うクラスだったら、違ったのだろう。けれど狭い私たち子供の世界では。もしものないこの世界では。間違いなく主人公なのだ。

いつのまにか馴染んでいたその力。始まりは覚えていないが、今までのクラスの主人公達は、みんな覚えている。

小学校四年。松野里奈ちゃん。

五年。末吉春樹くん。

六年。秋葉乃彩のあちゃん。

中学一年。石井美香ちゃん。

二年。佐原真紀ちゃん。

三年。古川理玖夜りくやくん。

そして今、高校一年生。どうやら私のクラスの“主人公”は、最初隣の席だった女子のようだ。

その中で、私の印象に残っているストーリーは二つ、三つだろうか。

素敵な主人公の話は面白いけれど、私の話は面白くないでしょう?物語の花であり中心が、主人公なのだから。

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