3何でも屋・ケイミ―との会合

 相談の末、ホテルの最上階で会合となったのである。

 24階のスィートルーム。贅沢な装飾品の数々と壁には絵画がかかり、棚の上には壺があり高級ホテルの一室を彩っていた。

(まぁ、絵画も壺もレプリカなの。雰囲気つくりにはいいわよね。レプリカでも)


 チェストに脚を載せてくつろいている女性が今回依頼する重要な協力者である。

 見積書をしばらく眺めている。

 協力者はお金にはとてもシビア。今回は協力してくれるだろうか。

 彼女の顔色を窺うと、青筋を立てている。

 まずいと思う間もなく協力者は書類を

 

 デスクにバァン!!


 とたたきつけてきた。


「わたしをこーんなに頻繁に、それもこんなに安く使うなんて。

 契約基本料金、2ケタ上げるわよ」


「そんなに上げないでほしいわ。

 多少なら金庫に余裕があるけれども2ケタアップはつらいの」


「はぁー。仕方ないわ。1桁アップで手を打ちましょう。

 黒髪にしないといけないからそれなりに髪が痛むのよね」


 自慢のブロンドが痛むらしく、日本を含むアジア圏への潜入は好まない。

 今も枝毛やうねった髪を弄っている。


「いつも君をふりまわましてすまないな」


「ほんとうよ。まったく。

 でも日本でほのぼのと金を数えている爺どもを

 騙せるとなると楽しみが増えていいわよね。

 勝手にチップくらいはもらうからね」


「お好きにどうぞ」


「契約成立ね。では印刷出来たら持っていってね。契約書と彼らへ挑戦状」

「ありがとう。仕事が早くて助かるわ」

 二人は手袋をして注意深く切手を貼る。

 これで一番指紋の残りやすい関門はクリアだ。


「念のため、指紋をふき取ってから封を閉じてね」


 軽く相槌を打ち、丁寧に各場所の指紋や汚れをふき取り、


 仕上げにマイクロファイバーの雑巾で拭い去る。そして封を閉じる。


「期待しているぞ」

「はいはい」

 手袋をしてそのまま投函するべく、ブロンド美人は席を立った。

「じゃあ準備があるのでこれで失礼」

「ええ」


 夫は私に罪悪感があることを知っているようだ。

「まだ迷っているのか? 割り切ることが必要だと言っているだろう」


「そう――精神力が限界になったら引退させてね」


「優しぎるから。もっと非常にならないと墓穴を掘るぞ」

「気を付けるわ」




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