借金のカタにパンツを撮られたら

紫 小鳥

第1話 これ以上はいけない

 もうこれ以上、パンツを見られるわけにはいかない。


「俺たちが囮になるから! 早く回復してきて!」

 迫りくるカメラドローンのうち、接近者を追尾するAI操作型を引き付けながら男たちは離れていった。

 人間が操作している撮影特化の小型ドローンが私を追い回す。


 ドローンを捕獲、もしくは破壊するのは認められている。機体が行動不能になると一定時間後に同数補充される。無理して飛行体を攻撃する必要はないが、可能なら減らしておきたい。十分私たちにメリットがある。

 左腕をチラと見やる。腕時計型の計器のうち、残りライフの表示を確認した。変わらずの残機イチだ。

 ゼロになったらどうなるのかはわからないが、とにかく回復しておきたい。


 囮になった二人は、私と距離を取りながらAI型を引き付けている。万が一ドローンを行動不能にすると、新しい機体が補充されたときはランダムな場所に出現してしまうため、私が回復するまではうかつに手を出せないだろう。


 ライフの回復条件は二つ。一つは譲渡。

 もう一つが回復役の審判に接触すること。今狙っているのはコッチだ。

 回復役は必ず二足での徒歩でしか移動しないため、ドローンの動きにさえ気を付けていれば必ず追いつける。


 ライフが減っているプレイヤーが回復役の半径2m以内に入って申告すると、回復完了までセイフティーエリアになる。

 当初はプレイヤーが協力体制を組めば絶対的な安全地帯を築けるかとも思ったが、そう上手くはいかない事情もあった。


 ともかく、あとは自力でNI型のドローンから逃げ、回復しなくてはならない。

 タイミングを計って壁に近い柱を小回りしながらドローンを振り回し、審判との距離を詰めるのだ。


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