第4話 悪夢は再び

第4話


歌side


それから数ヶ月経った。


あの光景を見てから、私はずっと引きこもっていた。


彼の最後の言葉が耳から離れないのだ。


でも、現実は残酷だ。


私はこれから1児の母となるのだ。


最愛の人との子供を産むのだ。


しっかりしなきゃ………


「大丈夫かい、歌さん?」

「うん、もう大丈夫。だって、私はこれからママになるんだもん♪」


………私はまだあの言葉が心を締め付けられている。


だが、つわりなどの妊娠中の負担が逆に功を奏したかの様に、少しずつ削いでくれた。


そして、遂に彼との子供を出産した。


可愛らしい男女の双子だ。


男の子の方は永治えいじ。女の子の方は永美えみと名付けた。


私達は泣く程に喜び、涙した。


其処から先が地獄の始まりだと知らずに……


-------------------------------------------------------------------------


「「ばぶっ!ばぶっ!」」

「後もうちょっとでお家だからね!」


ベビーカーを押しながら、私達の子供達を連れて歩いてる。


子供達は可愛いけど、こういうのはやっぱりしんどいわね…


そんな事を呑気に考えていると…


キキィーーーー!!!


「きゃあ!?」

「「おぎゃあ!!おぎゃあ!!!おぎゃあ!!!!」」


私達の目の前で車が事故り、転倒した。


私達は無事だったが、車やその転倒に巻き込まれた物が悲惨な状況になっている。


だが、それ以上に………


「あ、ああ………」


車の中で、今にも息が絶えそうな存在が見える。


そして、存在と私は目が合った。


合ってしまった………


「な、何で………!?あ、有り得ないわ!!!」


目が合った存在は、永遠元夫だった。


勘違いでも、錯覚でも、見間違いでもない。


、彼だった。


そして………


『愛してるぜ、歌………』


そう言い残し、動かなくなった。


嘘、嘘、嘘!!!


「いやぁーーーー!!!!」


私は子供達を放置し、取り乱してしまう。


悪夢だ、これは悪夢だ!!!


そう願いながら、私は意識を手放していく。


その間、聞こえてきたのは………


「「きゃっ♪きゃっ♪」」


………楽しそうな我が子達の声だった。


続く

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る