第2話 誘い 姦計 覚悟

第2話


雨崎 朱里と名乗る女に誘われ、俺達はカフェに来ていた。


話に聞く所、彼女は高校生らしい。


なので、此処の金は俺を持つ事にした。


「で、何の用だ?」

「策と力を授けに来ました。」

「はぁ!?」


訳が解らない。


その言い様はまるで神様だ。 


だが、その言葉の節々に説得力が在った。


何故かは解らないが、無理矢理にでも納得させてしまう凄みが在るのだ。


「貴方、まだ離婚した奥様を愛していますか?」

「何で知ってるかは解らんし、怖いから聞かねぇが、正直に答えてやる。当たり前だ!!!!」

「ふふ、でしょうね。だからこそ、私は惹かれたのです。」

「よせ、お前に言われても嬉しくない。」

「それも、でしょうね。安心してください、私も一途ですか、。」

「そうか…」


コイツに愛を向けられている奴は苦労するのだろう。


もしかしたら、とんでもない事になるかもしれない。


例えば、


いや、流石にないか…


「で、それがどうしたんだ?もう俺には何もする術は無いよ…」

「だから、私が助けに来たのです。」

「どういう事だ?」

「貴方は奥様を諦めるつもりはありますか?」

「無いな。」

「どんな結末になっても、奥様を愛し続けれますか?」

「出来るさ。」

「永遠に奥様を愛し続ける事を誓いますか?」

「勿論だ。」


何を当然の事を聞いているんだ、コイツは?


どんな目に合おうと、どんな事になろうと俺の歌への愛が消え去る事はない。


「素晴らしい!他の人達にも見習って欲しい位の愛です!気に入りました!ああ、私の目に狂いはなかった!」

「喜んでる所悪いんだが、何をするつもりなんだ?」

「実はですね…」


と、俺の耳に近付き彼女は策を話す。


その策を聞いた時、奴の正気を疑ったよ…


そんな事が出来るのか?ってさ…


でも、やるしかないとも思ったよ。


何故か、コイツの言葉は信じられたんだよ。


…俺は多分、コイツと同類だ。


力こそ無いが、俺とコイツは同じ目線を持っている。


全く、とんだ化け物に目を付けられた物だ…


「ありがとう、雨崎ちゃん。じゃあ、行ってくる。」

「はい。私が教えた住所、有効活用してくださいね。」

「おう。じゃあ、いつかまあ会えたらな。」


彼女に別れを告げ、心にも無い事を言う。


もう二度、会いたくはない。


アレはだ。


でも、俺はアイツに相乗りするしかない。


そうしなければ、俺は歌に永遠の愛を告げ続けられないからだ。


「此処か…」


高いマンションだな…家賃も高そうだ……


さて、屋上へ急ぐか…


…そろそろ、歌が帰ってくる頃だ。


「ふぅ、凄いな…壮観だ……」


これが『人がゴミの様だ』ってか?


いや、本当にゴミみたいに見えるな…


神様ってのはこんな感じで人間を見下ろしてるのかね?


「ん?来たか…」


どれだけ離れていようとも、俺が歌の事が解らない筈がない。


ちょうど下に居るな。


じゃあ、角度と場所を調整して…


「さらば、俺の肉体!今までありがとう!」


俺は勢いよく飛び降りる。


加速していく速度を感じながら、今までの日々を回想する。


俺達を捨てた阿婆擦れなババアを除けば、良い人生だったな。


あと少しで、地面か…


そう思った瞬間、目を見開いて驚愕している歌と目が合った気がした。


だから、俺は…


「愛してるぜ、歌…」


そう告げた瞬間、俺は飛び散った。


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朱□…………裏□里side


「良い人生でしたね、米崎さん。」


丁度いいコマだし、実験台でしたが、本当に良い物を見せて貰った。


はぁ、本当に惜しい。


どうして、人は彼の様に愛を持ち続けられないのだろうか?


「さて、帰ろうか。今日はりゅーくんとご飯を食べに行く日だもん♪」


と、彼女は去っていく。


これはまだ彼女が一応、人間だった頃の話。



奇しくも、彼女が愛しき人を振り、運命が狂う事が決定し、邪神が生まれる事が世界に確定した日…




…その前日の話だった。


続く。

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