第16話

*再会し相対する二人*



 

 

 ——っわわ!

 イザベラが雲や海面に出ている竜の胴回りを交わしながら周りを見渡す。

 

 暗雲が立ち込め辺りはまるで真夜中。

 

 雷鳴が咆哮の様に轟く。

 海がうねり、空にある暗雲もとぐろを巻く。

 そして。稲妻が竜の体躯の様に飛び交う。

 

 

 

 その様子に寒気を覚えながらも、イザベラは人魚から貰った変幻自在の羽衣を使ってどうにかこうにか偵察、物見をしていた。

 

「イザベラ‼︎戻って来い‼︎‼︎」と、船長が叫ぶが彼には聞こえず。船もまた荒波に飲まれない様に舵を取るので精一杯。

 

 

 たまに甲板に海水が入り、魔物も出、魔石はごろごろ手に入る。が、普段ならウハウハな筈が皆喜べないくらい必死で、


「船長‼︎竜たちが‼︎」

 と、船員がこの異常事態をたまたま景色でみたようで顔が真っ青。彼らは世界のさまざまな場所や怪物を屠っていた者たち。


 こいつらが蒼白になるくらい

 やばいか……

 と、思いながらも「負傷した奴はこっちに‼︎前衛後衛で対処しろ!」


 と、船長らしく冷静に命令していく。ある程度甲板の魔物が見えなくなってから「船内へ‼︎」と声をかけていく。

 イザベラもやっと戻って来、船内へ行こうとしたところ、

 

「——見つけたっ‼︎」

 

「—…⁉︎————っっ」

 

 と、イザベラは背後から来た黒い影に押し倒される。

 

「イザベラ‼︎」

 

『お相手は我らが——…』


 船長たちが助太刀に行こうとするも、海から這い寄る海蛇の魔物に遮る。「イザベラくん……」と、まだ動ける船員たちが行こうとするも、海と稲妻に見える海竜たちに怖気付き震える。

 

「動けるやつは頼む——‼︎」

 

「「おう‼︎」」

 

 

 

 

 

 

 

 ——しまった

 

 アナスタシアは焦っていた。

 死んだと思っていた弟に会えた衝撃、嬉しさ。

 それと自分の中の邪竜の感情。

 最近の己の情緒のおかしさも相まって頭が真っ白になり、アナスタシアはつい甲板に弟エリザベートを叩きつけてしまった。

 

 そのことに焦りながら、向こうで「イザベラ!」と叫ぶ船員たちに、

 

 ——?? イザベラ……?

 と、アナスタシアは少し困惑しながらとりあえずどうするか考える。血剣で止めてしまったので、血に塗れていた。

 兄の能力。毒の混じる血。


 ヤバい

 とは思いつつも、双子の片割れ。

 大丈夫だろうとどこか楽観的に考えていたアナスタシア。

 しかし、毒が回っているのか目の前の弟は眉間に皺寄せ、きつそうにしていた。ただ、彼も能力で血を流し、貧血気味。

 

「……っうう、ぼくは……」

 

「エリザ? す、すまん……」と、とりあえず謝ってから、貧血でそのままイザベラの上に倒れ込んだ。

 それを動けない弟イザベラは、そのまま自分に倒れ込む兄を見ながら、


「に、にいさん? えっと……」

 

 雨が止み、イザベラは兄のせいと体も重く動けないのでそのまま雲やそれから出入りする竜たちを見ながら、


「ああ、落ちて記憶なくなっちゃってたのか」

 とイザベラはそのまま呑気に考えていた。

 更にえっと…と、拾って匿ってくれた人達。船員たちを見遣る。

 彼らは彼らで、竜たちの猛攻が終わり、負傷者を看たり、破損部分を見たりと忙しくしていた。



 またアナスタシアが倒れる前、何かしらの合図を送ったのか、竜たちの猛攻も止まっていた。それに船長は安堵しつつも、

 

「どうすんだこれ……」と、船長は他の者に指示を与えてから倒れたままの二人と、ようやく暗雲から光を途方もないように交互に見た。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る