第52話 不可思議な力






 私が竜車に乗ってからおよそ1週間程の時間がたった


 時間が経つと共に父上やジーク達、従者も落ち着きがなくなってきた

 まだ龍が目撃された地点まで距離がある

 時間に換算するとおよそ3日ほどだろうか


 緊張しないと言えば嘘になる


 もちろん万全の準備を整えたつもりだ

 この戦いは決して博打ではない

 しかしそれでもどこか何かを見落としていないか心配になる


 虫の知らせと言うやつなのだろうか

 何かが起こる、そんな予感がする

 まぁだからと言って焦燥に駆られても仕方がないのだが……


 気晴らしに外を眺めていてると帝都にいた頃より遠くまで景色が鮮明に認識できた

 以前より視力が上がったということだ


 私の現在のレベルは41だ

 しかしレベル40の試練を突破したわけではない


 おそらく……いや確実に生魔力結晶によるものだろう

 私は以前、傭兵崩れから生魔力結晶を手に入れたがその生魔力結晶は傭兵崩れの魂が入っていたせいで生魔力結晶から溢れ出す魔力を操ることは叶わなかった


 それを何とかしようと実験をしていた時、よく分からない力が働き生魔力結晶から傭兵崩れの魂が消えた


 そして残った生魔力結晶を吸収した結果、いきなりレベル40になった

 おそらく傭兵崩れに起こったのと同じことが起こったのだろう

 生魔力結晶はレベルの壁を突破させる力があるのかもしれない


 考え事をしているとユーフェルミアが私のとなりに座った

 先ほどから距離を測りかねているのか私が座っているソファーの端に座ったり遠くにある椅子を持ってこようとしたりしていた


 何がしたいのかよくわからなかったのだが私の隣に座ってから固まっている

 ソファーに腰掛けた時と全く同じ体勢のままなのでソファーに寄り掛かってもいない


 私が何か話しかけた方がいいのだろうか?

 わざわざ隣に座ってきたということは用事があるのかもしれない


「どうかしたの?」


「……ううん、特に用事がある訳じゃないけど一緒に居たくて……」


 竜車が出発した当時と比べて少し空気は重くなっている

 普段から一緒にいるわけではないユーフェルミアからすれば居心地が悪いのかもしれない


「私で良ければ話し相手になるよ」


 私がそう言うとユーフェルミアは満面の笑みを私に向けた


「ライ君と話したいことがいっぱいあるの」


「まぁ時間はたくさんあることだし全部聞かせてもらおうかな」


「うれしい

 えーっとね、私、最近レベル30の壁を突破したときにお父様にお願いして婚約破棄してもらったんだ」


 婚約破棄?

 やはり高い身分だと言うのは間違いないようだがそんな簡単に婚約破棄などできるのだろうか


「そんな簡単に婚約破棄できたの?」


「正確にはその婚約者に決闘で勝って私より弱い男と婚約したくないって言ったの」


「…………これから私、いっぱい頑張るの」


 ん?

 いっぱい頑張るのとは?


「何を頑張るつもりなの?」


「何を…………料理とかかな……後は…………ねぇライ君って何が好き?」


 いきなりざっくりしすぎた質問が飛んできた

 そもそも何が好き?という質問には何と返せば良いのだろうか

 ここは率直に返しておくか


「利権とか動かしやすい駒かな」


 いや、もう少し話が続きやすそうな回答の方が良かったか

 こういう距離感で話すことが少ないから回答が難しい


「その動かしやすい駒ってどういうことを指すの?」


 やけに真剣そうな顔して聞いてきた

 今の私の回答に何か気になることがあったのだろうか


「コミュニケーション能力と戦闘能力が高くて人心掌握術に優れているといいかな」


「うう…………そのっ、将来お嫁さんにするならどんな人が良い?」


「それは正妻ってこと?」


「うん

 あとお嫁さんは一人だけで考えて欲しいな」


「弱みにならないっていうのは大前提で出来れば高い才能の持ち主だといいな」


「え!ねえねえ、その高い才能って例えばその親が神域到達者とかそう言うこと?」


 今度はやけに嬉しそうに聞き返してきた

 そこまで簡単な条件を提示したつもりはないが何か心当たりでもあったのだろうか


「そこまでの才能じゃなくてもいいけど神域到達者の血を引いてたら満足かな」


「ふふ、そっか……嬉しいな」


 ユーフェルミアは満足気に微笑みながらソファーの上で小さく跳ねている

 こちらとしても微笑ましい光景だがそれほど満足のいく回答だったのだろうか


 と言うか気にしていなかったが先ほどからさらに私への距離を詰めてきている


「嬉しいの?

 まぁよかったけど」


「もう一つ質問してもいいかな」


「全然構わないけど?」


「じゃあ好きな女性のタイプを教えて?」


 タイプか……考えたこともなかったな


「特に無いな」


「ええ! どうして?」


「どうしてって言われても……強いて言うなら信頼できる人かな」


「信頼できる人?

 じゃあどういう人なら信頼できるの?」


「どういう人……難しいな

 それは行動を見て判断するしかないんじゃないかな」


 この類の質問はこれ以上されても答えるのに困るな

 こういうのはだいたい質問する側の方が楽だろう


「というかユーフェルミアの話も聞かせて欲しいな」


 私がそう言うと一瞬悲しそうな表情をした後さらに距離を詰めてきた


「ミアって呼んで欲しいな」


「分かった、ミアの話も聞かせてくれるかな」


 私が言われた通り呼び捨てにするとミアは顔を赤くして下を向いた


「う、うん

 なんでも聞いて」


 ミア顔を下げたまま上目遣いでこちらを見上げた

 対応に困るな


「……じゃあ何か好きな物を教えて欲しいな」


「好きなもの?…………ライ君からもらった手紙とか……そのっ……すごく好きだよ」


 まさかの手紙

 もう少しまともなものが来るかと思ったのだが………好きな物が無いというのもあり得ることだと思うが好きなものが人からもらった手紙だけというのも悲しいことだと思う


 交友関係が狭いのだろうか


「そう……また手紙送るよ」


「う?うん、ありがとう」


 暇つぶしに話していたら会話の内容がよく分からない方向に行ったな




 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


ラインリッヒ 3


 ラインリッヒ自身も交友関係が狭いので人のことはあまり言えない


 ジークやシャル、エリックのことは親友だと思っているが世間話をすることはほとんど無かったため目的もなくしゃべることに慣れていない


 洞察力が高く人の感情を見透かすことに長けているが好意を見透かせたから活用できるわけでもないのかもしれない



 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄




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