第11話
「なんか変だぞ? 今日のお前」
「⋯⋯そんなことない」
「説得力皆無だぞ」
単純に元気が出ない。
朝、白瀬と一緒に登校できなかったことが原因か嘘をついたことが後ろめたいのか⋯⋯多分両方だ。
「てか、善一は今日日直じゃないだろ。なんであんな嘘ついだんだよ」
「わからん⋯⋯」
「⋯⋯まあ、話す気が湧いたら教えてくれよ。一応友達だしな」
心配してくれる優斗には申し訳ないが事情を話す気にもなれない。
今の俺は発言全てに「⋯⋯」がついてしまうくらい元気がないのだ。
⋯⋯まあ、放課後になれば気力も湧くだろ。
♢
そうして結局、放課後までずるずる引きずった俺は未だに机に突っ伏している。
授業にも全然集中できなかった。
真面目に受けないと母ちゃんに叱れるのに⋯⋯。
今度白瀬に教えてもらおうかな⋯⋯って、そうだ、会わないようにしてるんだった。
「はぁ〜⋯⋯」
思い出したらまた気持ちが萎えてきた。
⋯⋯ってか、なんで数時間会ってないだけでこんな萎えてるんだ。
今の俺ってそんなに白瀬をいじめたい欲でもあんのか?
「おーい善一。白瀬さんが迎えに来たぞー。元気出るだろ」
「な、なんだと⋯⋯」
不覚にも元気が出てしまった自分が悔しい。
だ、だけど、ここで素直に一緒に帰ったら自分に負けてしまう。
いつも通りドアの前に立つ白瀬の方へと歩き出す。
こっちの心持ちはいつも通りではないが。
「帰りましょう、善一くん」
「あー、うん。それなんだが⋯⋯」
「⋯⋯なんだが?」
「今日は寄るところがあるんだ。悪いけど1人で帰ってくれないか?」
「私もついていきますよ。いつも一緒に行ってるじゃないですか」
「え、あ、うん、そうだな⋯⋯」
そういえば帰りにどっか寄る時はお互いついて行ってるんだった⋯⋯。
お互い断ったことがほぼないし、断ったら不信感を抱かされそうだな⋯⋯。
「だ、駄目だ。白瀬はついてきちゃ駄目だ」
「え、なんでですか?」
「えーっと⋯⋯危ないところに行くから?」
「なんで疑問系なんですか⋯⋯」
深くため息をつく白瀬。
流石にこんなんじゃ誤魔化せないか⋯⋯。
「⋯⋯じゃあ今日は1人で帰ります」
「⋯⋯えっ?」
「善一くんが何を考えているか分かりませんが、危ないとこに行ったりするような人ではないことはわかっているので」
「いや待ってくれ。俺は不良なんだからそこら辺の廃工場に行ったりして喧嘩をだな⋯⋯」
「はいはい映画の見過ぎです」
雑に俺をあしらって白瀬は踵を返した。
「では、帰りますね。また明日」
「お、おう。また明日⋯⋯」
そう挨拶すると白瀬は俺に背を向けたまま廊下を歩き出した。
「———し、白瀬!」
あ、不意に声が⋯⋯。
「⋯⋯? どうかしましたか?」
キョトンとした顔で振り返る白瀬。
あわわどうしよう⋯⋯。
「えーっと⋯⋯気をつけて帰れよ!」
「——ぷ、ぷぷっ⋯⋯相変わらず不良らしくないですね」
「な、なにを〜⋯⋯」
馬鹿にされているのに何故か悪い気はしない。
⋯⋯って、いやいや! 立場逆だろ!
これからもっと白瀬にどっちの立場が上か———
「⋯⋯あっ」
そうだった。
忘れちゃいけない。
白瀬には好きな人がいるんだからあまり俺が構うのは良くない。
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