辻斬り騒動その2
怒って台所に逃げてっちまったお冬ちゃんが気になって厨房の方を見てると、銭田米の旦那が卓をバンと叩いて向かいの席に勝手に座って怒鳴りつけて来やがった。
「そんな事よりお
「いってえ何だってんですかい、岡っ引きの旦那」
「ばっかやろい! 岡っ引きじゃねぇっ目明しって言わねぇか馬鹿野郎っ! それよりもだっええ!? お
目明しってのあ、屯所の与力様方の下で働く兵隊みたいなもんで。大陸で言やあ与力が衛士長、目明しが衛兵って所だな。
まぁ与力の旦那方は領主に雇われた公僕のお侍様で身なりも態度も出来た人がおおいんだが、目明しってなあ大陸の衛兵と違って、いや、大陸の衛兵もそんなに良い奴はいねえか。なる奴の半分は元犯罪者ってもんで、捕まって
その辺は、一応訓練される大陸の衛兵に比べるとヤクザな
定着すりゃあ気にしねえってのがアザイ人の気質だが、中にゃあ揶揄されてるってえ(まあ半分揶揄してんだが)のが我慢できねえ銭田米の旦那みてえのはいるってなもんで。
「あんたさんになんか言われた覚えはねえんだが。殺しってなんの話だい旦那?」
「しらばっくれんじゃねぇやい、おいっ
「だから、なんの話だよ旦那。俺が誰を殺したっつーんだい」
「お前、昨日、四人の素浪人と刃傷沙汰の大立ち回りしたていうじゃねえか!」
どっから聞くんだか耳だけは速ぇな。
あいや、屯所から目と鼻の先の女沢川あたりの竹林でやり合ったんだ。誰に見られててもおかしくはねえか。
「どうなんでい!ええ!? やいっ、おいっ、さっさと白状しろぃっ! ネタは上がってんだよっええ!? そういうネタはなぁ、直ぐ入ってくるんだよ俺の元にっ!」どんどんと胸を叩く「俺・の・元・に・よ・うっ!」
「耳だけは早ぇな相変わらず」
「今日という今日はしょっぴいてやるからな、覚悟しやがれこの不良の異人が!」
やれやれ、コイツはちょいと厄介な事になりそうだぜ・・・。
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