第3話 遠くに住んでるママのお友達

たまに会った事もない人から僕あてに誕生日プレゼントやお小遣いが届く事があった。

届くと言っても母親が出かけた帰りに包みを持って帰るのだが。

母親は「遠くに住んでるママのお友達から」とだけ言っていたが、それはなんとなく男なのだろうと子どもなりに察していた。


僕は絶対母親似だろう。


プレゼントは僕が欲しいと言ってたゲームのソフトやハンドスピナー。

その時友達と話していて何となく僕も欲しいとノリで言ったものだったり。

母親が気を遣って買って来たのだろうと思っていた。


でも正月にもらったお年玉で分かった。

「遠くに住んでるママのお友達」は存在するって事がね。


ポチ袋に油性マジックで書かれてる「星奈くんへ。あけましておめでとう」って字。

これはお母さんの字ではない。


あなたは誰なんだ。


なぜ会いに来てくれないの?


その人の話をしている時の母親はとてもキラキラしていた。

父親の話をする時と天と地の差。

僕の欲しいゲームを誕生日に買ってくれたり、お小遣いくれたり・・・。


一体どんな人なんだろう?


母親は相談を聴いてくれる女友達だって言ってるけど絶対違う。

僕の勘がそう言っている!!

きっと僕達を救ってくれる脚長おじさんに違いない!

って思っていた。


小学6年生になった僕はそんな人が居たという事をすっかり忘れていたのだ。



僕らの住む賃貸マンションのロビーにあるポストの表札を見ながら、若くて細見の男性がうろうろしていた。

住民ではないだろう。

僕の本能が関わりたくないと訴えているので、目も合わせずにエレベーターの方へ急ぎ足だ。

「ねぇ!もしかして星奈君じゃない?」


誰だよ。


赤ちゃんの時とか小さい頃に会った母親の友達とか?

そんなん覚えてないし怖い・・・!!


若い男の方をゆっくりと振り返るが、やっぱり見覚えもない。

「大きくなったね!今いくつなの?」

なんだこのテンプレみたいな怪しさ・・・・。

僕は相手の目も見ずに踵を返し、エレベーターへ走り出した。


「待って!!ママから聞いてない!?俺の事・・・!!」

母親の元恋人か?


その時僕の中に浮かび上がったのは、


僕は知らない母親の元恋人=知らない=何も聞かされていない・・・=ストーカー!?

という図式が成り立ち、ますます恐怖感に脅かされた。


男は僕の顔をもっと近くで見ようとエレベーターの所まで走ってきた。

身体によくフィットした黒いズボンを履いた長い脚がこっちに向かってくるのだ。


もうだめだ・・・・!!!捕まえられる・・・!!


「ちょっとうちの子に何してるんですか!!!」


もう精神が瀕死状態まで来た時に僕を助けてくれたのは、仕事から帰って来た母親の怒鳴り声だ。

「母さん!!」

「舞?」

「え?もしかして雪矢・・・・?」


だから誰だよ!!!!



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