Chase 13 Chika side すると、まさかの……。


 ――忘れた。先刻の予想……いや予感というべきだろうか、訪れるお部屋。



 今は灯りも消えたお部屋。そして息遣い聞こえるスマホ片手に灯す。クリアーにクッキリするお部屋。金のトロフィーも光を浴び、当時のハッスルを蘇らせるように、輝きを発する。そこは模型女子モケジョらしく彩られた――そうなの、梨花りかのお部屋だ。


 そして、ここに訪れたのは僕だけではない。


 太郎たろう君は僕のお部屋で待つけれど、可奈かなはベッタリ僕についてくる。つまりスマホから零れる梨花の息遣いや声も、しっかりと聞こえてるということになる。



 ……何故なにゆえそこまで、

 梨花のことを気にするの? とも思ったけれど、……何となく。何となくだけれど、理解するその手前ぐらいの位置で、僕は可奈の思いに同調できるような気がした。


 梨花は可奈のこと、どう思っているの?


 そんな思いが脳内、あくまで脳内に広がる。可奈の顔を見ていると……


「何かあったみたいね、その感じだと。ものの見事に吠え面掻いてるようだね」

 と、言えた。


 そしてその言葉通りの梨花の顔が、目の当たりに見えてくるようで、それでもって、


『うるさい! 余計な詮索はいいからっ、

 えっと……あの、僕のお部屋に行って、お勉強机の上にね……』と、梨花は言うけれども、威厳も迫力の欠片もなくて、それに、やはりこれのことだね。指さし手に取りで、


「あるよ。バンプラ・スタンプラリー専用ノート。

 しっかりとど真ん中に、しかも誰でもわかるようにって……まさかとは思うけれど、マジで忘れちゃったってことなの?」

 と、あまりにも可笑しく、可奈も堪えていて余計に、我慢できずに「プッ」と……


『あんた、今笑ったでしょ』とスマホの中から、梨花の声がキンキン響くのだ。



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