吸血鬼の悪役令嬢〜追放されて復讐を誓った私は魔剣の力で王や勇者でさえも断罪する〜

ゆう

第1話 吸血鬼

雨が降り続ける中、私は目覚めた。

そして、まだ頭の痛みが引かない。


世の中は理不尽なことだらけだ。

化け物に見える家族は、

私を殺すために森の奥に置き去りにした。

そう、私は家族に捨てられたのだ。



「ここは、迷いの森?」



頭の痛みが引いてくると共に記憶が蘇る。

私は、ルミナスの公爵家、

リーベルト家の長女ルキア・リーベルト。

そして、同時に私は転生者でもある。


転生前の記憶では、ここは乙女ゲームの異世界で結末を全て知っている。



「胸の中の復讐心が強すぎる」



ルキアの記憶では、リーベルト家は複雑な事情があり常に内戦状態だ。

義理の母であるイレーヌから、

毎日嫌がらせを受けている。

そして、日々少しずつ加熱していき、

ついに森の奥深くに捨てられた。

オーク達が住む、迷いの森に。



「まさか、

 睡眠薬まで使っていたなんてね」



ゲームでは、ここからルキアは奇跡的に生還してリーベルト家に戻る。

しかし、よほど辛い事が多かったのか、

それ以降は人が信じられなくなり、

自らの願望、欲望を叶えるだけの怪物となっていた。

そして主人公の邪魔をする存在となる。



「ふふふ、

 まさか、私が…」



ゲームをやっていた知識はある。

だけど胸に宿る復讐心を抑えきれない。

イレーヌをはじめ、裏切った者を殺したい。

殺したくてたまらない…



「私が、悪役令嬢に転生するなんてね」



でも、このままでは生き残れない。

この迷いの森は欲望にまみれたオーク達が、

迷い込んだメスを狙っている。

14歳の小娘が、装備も無い状態で立ち尽くしていれば、瞬く間に餌食になってしまう。



「そういえば、私のスキルは?」



転生前に女神がスキルを言い渡していた。

転生を受け入れたからには、チートスキルを貰えなければ納得が出来ない。



「れ、錬金術・X?」



まさかのレアスキルの一つ、錬金術だ。

錬金術を入手したけれど、Xって何だ?

ゲームをやっていた時にも出てこなかったから意味が分からない。



森を抜け出す手を考えなければならない。

それに錬金術を使うために媒介となる、

アイテムが必要だ。



「素材が自分の血くらしいか無い…」



オークに蹂躙されるのも気が引ける。

出来る事は何でも試さないと生き残れない。

私は偶然落ちていたナイフで指先を切り、

錬金術を発動した。



すると突如のことだった。

目前に次元のゲートが生まれたのだ。



な、なによ、これ。

黒い渦なんてゲームには無かった。

こんなのに飛び込めるの?



その瞬間、近くでオークの雄叫びがした。

どうやら私の匂いに気づき、近づいている。

見渡すと涎を垂らしたオークが見えた。



「はぁ、仕方ないか…

 あんなのに慰み者にされるよりは…」



仕方なく私は黒い渦に身を任せた。

そしてその渦は、私の身体と共に世界から消滅した。




目を開けて辺りを見渡してみる。

前には城が見えている。

外壁は、所々にヒビが入っており、

コウモリが空を飛ぶ。

更に薄暗い景色の中で霧が漂う。

そして城の前には部外者が入れないように、

大きな柵が立っている。

この雰囲気の城は…



「ま、魔王城じゃないよね?」



こんな城は、ゲームでは見た事がない。

その不気味な城を前に唖然としていた。




そして、何故なのか理由がわからない。

私の身体に反応して城の柵が開いていく。




「は、入れってこと?」



恐る恐る城の中に入っていく。

すると数人のメイド達が立っている。

見た目は人間だが、まるで人形でも見ているかのように美しい。



そして何かに導かれるように謁見の間まで

直進すると目の前に信じられないほど、

綺麗な男が座っていた。

肌が透き通るように白く、黒髪に赤目だ。




「あ、あの…」




私が質問しようとしたところ、

気付けば後ろから、騎士に刺されていた。






そこで私は、

ルキア・リーベルトは息絶えたのだろう。






◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






目を開けると、そこはベットの上だった。

そして隣には一人の女性が立っている。



「起きた?」



誰だろう…

とても綺麗な人。



「いきなりご主人様に声をかけるなんて…

 殺されて当然よ…」



呆れながら話しかけてきたのは、

入り口で立っていたメイドの一人だった。



「まあ何も言われずに刺されたから、

 最後のチャンスに血を分け与えられたの」



「え?」



「人間がご主人様の血を受け入れる事は、

 未だかつて無いけど貴方は成功した。

 そして、貴方は…」

 

 

私は目の前のメイドが何を言っているのか

分からない。

そして自分に何が起きているのか理解できないでいる。










「貴方は、吸血鬼になったのよ」










私はどこかで選択を誤ったのだろうか。

そしてどうやらこのゲームのラスボスの種族である吸血鬼になってしまった。

これから待ち受ける未来がどうなるのか見当もつかない。

しかしふと疑問に思ったことを聞いてみた。




「あの、もしかして私、

 めちゃくちゃ強くなっている?」




「当たり前でしょう…

 世界最強の吸血鬼の血を、

 分け与えられたんだから」




私は二つの人格が融合している。

転生者としての私なら途方に暮れているが、

ルキアとしての私は違う。

圧倒的な力を手に入れて嬉しくて仕方ない。

あの憎き家族に復讐が出来るのだから…

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