第11話 最後の日

 いつも通りの時間に目を覚まし、いつも通りに着替え、いつも通りに朝食をとる。


 いつも通る廊下や部屋も今日でお別れだと考えると、寂しいものだ。


 メイドさんとすれ違い「おはようございました」と挨拶をするが、これも今日で最後だ。


 荷物は必要なものだけ持っていくことにした。

 そのため俺の部屋には少し物がある。


 そして、机の上には一枚の手紙を置いている。


『俺は旅にでようと思います、今までありがとうございました。ロイザより』


 短い手紙だが、全ての気持ちを伝えるとこの紙には入りきらないだろう。


 窓を開け、浮遊のスキルを使う。

 このスキルを使うと音速で飛ぶことができる。


 1つ目の目標地点はエルフの国だ。

 エルフの国には三大迷宮の内の1つに数えられている迷宮がある。


 三大迷宮とは、エルフの国・ポリミル帝国・水中庭園にある迷宮のことだ。

 この3つの迷宮は1000年以上前から存在しているらしい。


 そして、未だにクリア者がいない。

 すなわち、狂暴なモンスターが存在するということ。


 俺のレベルを上げるには最適だった。



 ≡≡≡≡≡



 いくつもの山を越えた、海を越えた。

 もうすぐ夕日が沈みそうだ。


 野宿をするため地面に足をつける。


「おっと」


 半日近く飛んでいたためか、膝に力がはいらず尻餅をつく。


「いててて」


 痛い尻を撫でながら、立つ。

 気づけば辺りは暗くなっていた。


 魔物の気配はなかったが、念のため結界を魔法をつかった。


 収納魔法を使い、テントを出す。

 そのテントを張り、中に荷物を置いた。テントの中は狭く俺がギリギリ足を伸ばせるくらいだった。


 外にでて、焚き火をした。

 火のぱちぱちという音に癒されながら、夕飯を作るため小さな鍋を出す。


 道中で手に入れた肉や、野菜を入れ煮込む。

 ぶくぶくと水面がなり、手持ち皿に移した。


「熱っ」


 肉が熱かった。

 舌がヒリヒリする。


「………1人か」


 静かな森のなかで1人で食事。

 このようなことは初めてだ。

 そのためかなんだか悲しい。


 作った煮物を口にはこび、空の星を眺めた。


 いつの間にか鍋のなかは空になっていた。

 鍋を洗いしまう。


 テントのなかで横になった。

 背中が痛い。だがこれから宿に泊まる以外はこの生活になるだろう。


 そんなことを思い、目を閉じた。



 ≡≡≡≡≡



「おーーーーい人族よ!」


 誰かが呼んでいる。

 目を擦り、重い瞼を押し上げる。


「………えと、どちら様?」

「我が名はディガンダーだ」

「…………?」

「魔王の娘じゃ!!」

「………………え」


 目の前には角がついている少女。

 なぜか俺の隣で寝ている。

 俺の顔とその少女の顔は約5センチくらい。


「ちかっっ!」

「驚くのはそっちじゃないだろ!!」


 おい、俺がボケたみたいになっているだろう。


「ほら、お家に帰りな」


 子供のお遊びに付き合う暇はない。

 折角早くに起きた──起こされたか。

 まぁ早めに出発してもいいだろう。


「むむむ!」

「本当に『む』って言うんだ」

「むむむむむ」

「ほら、子供はお家に帰りな」

「我は子供じゃない!」

「お家はどこかな?連れていくくらいならしてあげるよ」

「話を聞け人族よ」


 少女は顔を真っ赤にした。

 すると少女は立ち上がり、右の手のひらにファイアーボールを作ってみせた。


「ふぇっ!!ファイヤーボール!?」

「我は魔王の娘じゃ!これくらい余裕じゃ

 ぞ」

「………おう」


 降参、降参。俺が悪かったみたい。


「で、魔王の娘がなに用?」

「我はディガンダーじゃ、ディガと呼ぶと良い」

「で、なに用?」


 少女の言葉は無視し、要件を聞く。


「結界が張ってあったから、気になって来たのじゃよ」

「……え、結界破ったの?」

「そうじゃ、お主の結界は強力じゃったな、壊すのに時間かかったぞ」


 俺の結界はそう簡単には壊せない。


「もう、なんなの君は?」

「我はディガンダーじゃ!!」



 ────────────────────


 ★・♡をよろしくお願いいたします。


 カクヨムを更新する余裕がなくなりそうなので、次回はいつになるかわかりません。


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