空狐なクー子はリアルです! ~もふもふお稲荷ママ、大切な狛狐のために頑張ります! 神様のお仕事と配信業! VTuberって言っておけば、狐でも大丈夫なんだよね!?~
本埜 詩織
稲荷神族騒乱開始!
第1話・今々にちは!
遥か昔、日本でも水田が使われるようになった頃に生まれた狐。
「コンコンにちはー!
それが何故か今々日に至るまで生き、あろうことか自らをVTuberと名乗ったのである。
そう、名乗っているだけだ……。
みっちー:尻尾すごいね! どうやって作ったの?
そぉい!:
ぽりごん:不気味の谷仕事しろ!!!
不気味の谷現象、近年クリエイターを大いに悩ませる現象である。リアリティの高いモデルを使うと、何故か不気味になってしまう現象だ。
だが、このクー子には関係ない。
「う、うん! すごいよ! 一本一本手作り? だからね!」
なぜなら、クー子はVTuberではないのだ。それを自称して顔出し配信を行っている、ただのUTuberである。
つまり……しっぽも耳も、本物だ。
もちろん、パソコンやカメラその他もろもろなどクー子は持っていないどころか知らない。テレビに映像が映るのは、妖術だと思っている。
そもそも、そんなもの、神社風の家しか立てられないクー子の家には似つかわしくない。
ゆえに、クー子はやってのけた。妖力神通力ゴリ押しのインターネット開通を。
即ち、空狐という神格の無駄遣いである。
本名
みっちー:しっぽみせて!
そぉい!:しっぽ見せてくれないと、枝豆のうちに収穫しちゃうぞ!
ぽりごん:なんで疑問形? テクスチャが手作りって当たり前じゃん。
クー子は慌てた。テクスチャなど、クー子にはわからぬ。所謂リサーチ不足である。
「え、えっと。じゃあ、しっぽのテクスチャも、よく見て?」
無理やり知っている体で通そうとする。だが、またボロが出た。
しっぽを自分で触って、その毛並みの良さをアピールする。クー子はしっぽに誇りがあったのだ。
そもそも、クー子のしっぽは狐界第二位の至宝である。一位が誰かというと、
当然ながら、カメラを使っていないクー子の放送に画質の上限はない。高性能モニターと使っている視聴者には見えてしまうのだ……。
ぽりごん:まって! どんなトラッキング使ってるの!? しっぽの毛まで揺れてる
みっちー:なんで毛が一本一本揺れてるの!?
そぉい!:物理演算って言っても限界あるでしょ!?
重ねて、クー子には専門用語がわからぬ。疑問文が頭の中で飛び交っている。
だが、それを口に出すことだけはまかり成らぬ。出してしまえば、人外が露見するやも知れぬからである。
「手作り、だもん!」
苦し紛れのその一言。
だが今は永和の世。人外が人より隠れて久しい。故に、口にしたところでなりきりとしか思われない。人は、人外など架空の存在としか思っていないのだ。
それをクー子は全く預かり知らぬのである。
そぉい!:手作り万能説!
ぽりごん:てか、マジで
みっちー:ありえる、じゃなかったらこのモデルの完成度には
と言うのは、視聴者の冗談。
だが、クー子は焦る。
「ちちち、違うもん! しっぽ生えてる人なんていないでしょ!? ほら、耳も生えてるよ! 動かせるもん!」
クー子は耳をピコピコと動かした。
これがまた、現実としか思えないリアルな動き……というのも現実だからである。
お互いの常識が相乗効果を生む。
ぽりごん:クー子ちゃんマジ空狐!
そぉい!:すわ!? 妖怪の仕業か!
みっちー:空狐って言うとほとんど神様だから、妖怪は失礼だよ!
演者としてのクオリティの高さを楽しむ視聴者と、人外バレを警戒するクー子。その、二つの壮大なすれ違いコントこそがチャンネルの目玉となったのである。
「違うもん!!! VTuberだもん!!!」
後に、モデルのリアリティをきっかけに、徹底的に考察を浴びせられるVTuberの産声はここに上がった。ただ、それはクー子がファンをつかむきっかけに過ぎない。
そして、クー子の胃痛の種もここで生まれたのである。
一部を除いて、バレる可能性がゼロであるというのに……。
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