バーサーク勇者~クラスで異世界転生しても、俺だけ悪役ポジションらしいのでどの勇者よりも強くなってダンジョンも全部ぶち壊す~

多雨ヨキリ

第1話 仲良い幸せ

「なあ、今日のグラビア見た?」


 俺は学校の登校中に買った雑誌を広げる。


「見た見た! あいつ普段おとなしいのに、脱いだら結構すごいんだな」


「会話キメーよ!」


 俺は二人の親友とワイワイと談笑する。

 このグラビア雑誌の表紙に写っているのは、クラスメイトの一人だ。確か名前は、


高木柚穂たかぎゆほだっけ」


「可愛いよな。学校で話してるのほとんど見たことないけど」


 彼女の方に視線を送る。高木は伊達眼鏡を掛けたまま、うつむいている。


「俺アタックしてきていいかな?」


「止めとけよのぼる。ごめんなさいの一言だけだって」


「言いやがったなカンちゃん!」


 カンちゃんと呼ばれた男は、細身で身長が高い奴だ。


「まあまずは日頃の行いを改めれば?」


「うっるせえよ! 俺ほど超健全男児いねえっつうの! そういうお前はどうなんだよ杉松!」


 杉松は、少し太り気味の奴だ。だが意外と足が速いので、動けるデブポジションだ。


「僕は百パー無理だな」


「ぎゃははははは! だろーな」


 とまあ毎日こんな感じだ。

 トンデモなく低俗な会話だが、多分どこの男子高校生もこんな感じだろう。


 内容のある話ばっかりしてる男子高校生なんて気持ち悪くて近づきたくもねえ。中身のねえ話が一番楽しいんだよ。


 それは良いとして、どこだここ?


 気づいたら、全く知らねえ暗い洞窟のような場所にいた。ここに俺一人だったら、まだ俺だけがおかしくなったと思える。


 だが俺の目にはクラスメイト全員が映っている。

 つまりクラスメイト全員がおかしくなったのか?


「なあ、カンちゃん、杉松。俺達今どこにいるんだ?」


「んなもん知るわけ無いだろ。気づけばここにいたんだよ」


「そっか、良かったあ」


「はあ!?」


 みんな揃って頭おかしくなったわけでは無いことが分かった。つまり俺もまともだ。


 だが一番心配なのが出口が無いことだ。

 そのせいで全員半狂乱状態になっている。


「だせよごらあああああああ!」


「どこよココ!」


「誰か助けてえええええええっ!」


 狭い一室なのでうるさくて仕方ない。だがそんな時、天井から光が差し込んだ。

 そこには、たくさんの人たちがにこやかな笑顔を浮かべて覗き込んでいた。


「まあ、成功だわ!」


「ああ、良かった良かった」


 何が良かっただよ。はよここから出してくれ。俺グラビア雑誌まだ全部読めてないんだよ。


 直後、俺たちは再び場所を替えられた。今度はお城の中のようだ。まったくもって意味が分からない。


「ようこそおいでくださいました。未来の勇者たちよ」


 するとそこに現れたのは、いかにも王様風の老人一人と、いかにも王子で勇者ですってかんじの男一人がいた。


「長旅お疲れさまでした。話は後で、今はお召し物を授けましょう」


 初めはさっさと家に帰せと言わんばかりの態度だったが、綺麗なドレスを見た瞬間、女子たちの視線は釘付けになった。


 そして男子には、宝物庫へ案内された。


「すっげええ! 売ったらいくらだ?」


「なんでも好きなものを一つずつ差し上げましょう」


「マジか! やったぜ」


 その後、一同は一番広い応接間のような場所に通された。


「では話を始めましょうか。どうして皆さんをこちら側の世界へお呼びしたのか」


 俺はもらった小さめな王冠をくるくると指で回しながら、話を聞き始めた。聞く気は正直なかった。


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