友達#1

 死なない私は死にたい。生きることに楽しさを見出せない人は多くいるだろう。でも死と言う概念に対して恐怖や好奇心でなく、憧れを抱く私は異常なのだろう。そんな私はいつも通り死に憧れ、生きることを続けた。



ピーンポーン、


「さっきから何回も誰だろう。」


 そう呟きインターホンを眺める。そこにはお人形のようにポツリとたった香の姿があった。


「はーい?どうしたの香ちゃん?」

「あっ!やっとでてくれたぁー!なんで出てくれなかったのよー!」

「今行く。」


質問の答えになっていないのは天然なのだろうか?はたまた狙っているのだろうか?狙ってやっているのだとしたらなかなかの策士よ。なんて思いながら玄関のドアを開けた。


「どうしたの?」

「どうしたのじゃないよ!なんで今日学校休んだの!?」


電柱にもたれかかりながら口を動かす。


「ちょっと、色々あってね。」

「昨日自殺しようとしたでしょ!みちるから聞いたよ!怒ってるんだよ私!」

「ごめん、、、、それよりなんで家知ってるの?」

「先生にエッホエッホ、、頼んで教えてもらったの!」

「わざわざそこまでしなくてもいいのに。」

「何言ってるのよ!友達でしょ!てか友達じゃなくても死のうとしてる人ほっとけないでしょ!」


 香は本当にいい人だ。それに縋って甘えて、頼って、、、、なんてしている私はどれだけ愚かなのだろう。それを認めないために私はまた香に縋ってしまう。


「あっ!あとこれ!学校のプリント!明日はちゃんと学校きてよ!」


 そう言いながら膝に手を置く、そして深呼吸しながら笑顔を作ってくれた。その笑顔は無理矢理で、でも、全力な気持ちが伝わって来た。


「ちょっと休憩していく?」

「そうさせてもらおうかな?えへへ、へばっちゃった。」


 まだ作り笑いをやめない香になんと声をかけていいのか、今の私には分からなかった。


「じゃあこっち」


 リビングに案内しながら先にドアを開け倒れた椅子を立てた。


「お邪魔しまー、、、、え?」


 そこにはさっき使った、正確には使おうとしていた自殺用のロープが落ちていた。


「あっ、、、、」


 文字通りあっという間にその場の空気は凍った。気まずい雰囲気が部屋に爆音で流れる。床にポツンと置かれた引きちぎれたロープと天井からだらんと垂れ下がるロープの跡はものすごく、むごいものに見え、言い訳のできないほどに酷く悲しいものだった。

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