副産物

あの人のために文字を書いていた

あの人に見てもらうがために書いていた

自分を魅せるために書きはじめたのが

他人に媚び売るために書くようになっただなんて

心底馬鹿だと自分も思うよ

きっとそれもわたしの一部なんだろうけど

認めたいとは露ほども思わなかったなあ

あの人は売られた媚を買わなかったし

わたしの売った媚はきっと

文字を書く腹の足しにもならなかった

そうに違いないのだろう

……これは媚売りの副産物だよ

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