書き慣れない手紙だからこそ伝わるもの

 とある少年がわけあって書くことになった、普段あまり書き慣れないお手紙のお話。

 説明がものすごく難しい作品です。
 物語の内容やあらすじそのものは、説明しようと思えばきっとできるのですけれど。
 しかしこの物語の軸はそこにないというか、一番紹介したい魅力を伝えるには、そういう紹介はかえって余計なんじゃないか、と思えてしまう。

 そういう意味で、本当に紹介文の「男の子が頑張る話」というのがまさにぴったり来るお話です。

 それでも最低限あらすじを説明するなら、「主人公にとってかけがえのない誰かの、その引っ越し当日の出来事」というのが主な内容です。
 もちろんその出来事そのものも頑張っているんですけど、でもそれ以上に大好きなのが、作品本文でもあるこの手紙の書きっぷりそのもの。

 文章というか文体というか、〝これを書いている彼〟自体に魅力があるため、やっぱりあらすじ的な説明ではとても言い表しきれません。
 本当に「いいからまず読んでみて」ってなっちゃう……。

 物語としては『そのあと』が好きです。
 手紙そのものもものすごく好きなのですけれど、でも物語としてはやっぱり「それから」の持ちうる強度が好きで、そこをしっかり逃さずやってくれたのがもう本当に嬉しい。

 まごうかたなき「男の子が頑張るお話」でした。
 まずは読んでみてほしいです。きっと思った以上に頑張っていると思うので。