4.もふもふ天国

 二人部屋は思ったより広かった。狭いがバスルームが付いていて、中にはトイレとシャワーがついている。この他に大浴場が二つあり、西側には露天風呂もあるという。なんてすごい学校なんだと驚いたけど、驚きはもちろんこれだけではなかった。


「フェン、いつのまに入ってきたの~? モルルンはよかったの~?」


 和人(かずと)の腕の中にいたウサギが和人の腕からピョンと下り、大きな毛の長い黒い犬の鼻づらに飛びついた。

 グル……犬は口を開けると頭を振ってウサギを下ろした。その犬のおなかの辺りには白と暗い橙、黒の丸いものがくっついているように見えた。あれって三毛なのかな? 犬は本当にでかくて、オオカミかなと思った。


「あ、大丈夫だから入って入って~。フェン、モルルン、こちらルームメイトになった山倉将悟(しょうご)君だよ。よろしくして~」

「……一頭、と二匹?」

「この子たちについては後で説明するね。こっち側が山倉君のベッドと棚だよ」


 そう言って示されたベッドのサイズはでかかった。


「でかっ!」

「動物と暮らすことが想定されてるからね~。1階の部屋のベッドは全部でかいんだって」


 それは動物と一緒に寝ろってことか? おしっことか下の世話はどうするんだ?

 疑問が顔に出ていたらしい。


「この子たちのトイレは基本外だよ~。あ、でもウサギはいろんなところに糞をするから踏まないように気をつけてね~」

「あ、そうなんだ」

「なんかウサギって自分の糞を一定量食べるみたいなんだよね~」

「ええっ!?」

「柔らかい糞は自分で食べるんだって。栄養の吸収に必要みたいだよ」

「ああ、そういう……」


 動物を特に飼ったことはないが面白いなと思った。


「だからこの部屋の中ではスリッパ履いた方がいいよ~」

「わかった。ありがとう。ちょっと下りてもらっていいか? 片付けするからさ」


 腕の中のもふもふはとても愛しいと思ったがいつまでもだっこしているわけにはいかない。断って床に下りてもらった。和人が目を丸くした。


「山倉君て動物にも丁寧なんだね」

「丁寧? いきなり下ろされたら困らないか?」

「……そうだね。仲良くしてね」

「うん」


 和人がにまにましている。ヘンなヤツ、と思いながら荷物を片付けた。

 広間は食堂と兼用らしい。ウサギのエサは? と聞いたらみんな各自エサは調達してくるのだと聞いた。

 せっかくルームメイトになったよしみで一緒にごはんを食べることにした。女子たちはすでにいくつかに固まっているし、一緒に来た男子も一塊になっていた。奥の方には先輩たちがいて、何やら話しているのが見えた。食堂の時間は、夕飯は五時半から八時まで開いているので思い思いに来るようだ。この食堂、基本は開放されているから、食事が提供される時間はってことだけど。


「……動物の世話っていっても……なんかイージーモードだな?」


 エサを用意しなくていいって、それは世話をしていることになるんだろうか。


「町とかで飼うよりは楽かもね~。でも半分外飼いになるからダニとかノミとか持って帰ってくることはあるみたいだよ。動物同士でけっこう毛づくろいしてるからあんまり被害はないみたいだけどね~」

「あー、そーゆー問題もあるよなぁ」


 かわいいかわいいでもふもふを堪能してしまったが、ちょっと気をつけるようにしよう。


「一応島には野生の動物もいるから、イノシシとかには近寄らないようにしてねって言われた~。あんまりこの辺りにはこないけどたまに来るみたいだよ~」

「あー……イノシシって縄張り意識ないからなぁ」


 と聞いたことがあった。和人は目を丸くした。


「知ってるんだ?」

「小さい頃は山に住んでたんだ」

「へー、じゃあいろいろ動物とか虫の生態なんかもわかるのかな? いろいろ教えてよ」

「教えるほどは知らないよ」


 夕飯はおいしかった。米はこの島では栽培していないから内地から運んでくるみたいだけど、野菜はいろいろ栽培しているらしい。ちなみに、藤木先輩は緑の手を持っていて植物の栽培が得意なのだとか。それで野菜を作ってくれるのだけど、その野菜で動物を釣ろうとしても野菜だけ取られて逃げられてしまうのだという。なんか気の毒だなと思った。

 人参三本はうちのウサギたちのエサになった。和人のウサギにも一本あげたらすりすりされた。かわいかった。


「藤木先輩ってこうされるだけじゃ不満なのか?」

「え?」


 和人が首を傾げた。


「だってこの子すりすりしてくれただろ?」

「先輩からもらう時は奪い取ってくるみたいだよ~」


 いただくというのに動物たちの態度はよくないらしい。やっぱり気の毒だなと思った。


「ところでさ、お風呂どうする? 大浴場は二階にあるけど、動物たちと一緒に入れるお風呂は一階にあるよ~」

「マジか!?」


 大きな犬のフェンとウサギはお風呂に一緒に入ってくれるそうだ。

 部屋に戻ってウサギたちに「風呂一緒に行くか?」と聞いたらついてきてくれた。とても嬉しくてついついにやけてしまう。


「山倉君、鼻の下伸びてるよ~」


 うるさい。ウサギがかわいすぎるんだ。

 名前どうするかな。


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一日3~4話上げるのはいいのですが何時頃に上げればいいのか悩みます。更新時間しばらく不規則かもしれませんがよろしくお願いします。

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