離島で高校生活送ってます

浅葱

離島の高校へ

プロローグ

 それはちょっとした好奇心。

 小さい頃は山で暮らしていたから、「離島」と、「大自然」という言葉に心惹かれてしまったのだ。


 ブーブーブー

 空気が振動するような音を立てて、一緒に暮らしているウサギが駆けてきた。俺は腰を少し落としてウサギがいつ飛びついてきてもいいように身構える。高校から学生寮に続くこの道はかろうじて道といえる程度に踏み固められた土の道で、ちょっと油断すると踏ん張りがきかない。

 ぴょーん! と音がしたように大きめのウサギが腕の中に飛び込んでくる。


「アル、ただいま。あー、疲れたよー……」


 そう呟くように言ってウサギの身体に顔を埋める。もちろん撫でるのも忘れない。この橙色、というか金色に近い毛並みがたまらない。ああ癒される。困ったちゃんだけど可愛くてしょうがないんだよな~。

 ぷぅ~ぷぅ~ぷぅ~。

 ウサギが満足そうに鳴く。中間テストがどうにか終ったから、今夜はウサギをモフり倒すつもりだ。

 って、確認する為に持った後ろ足が異様に汚れている気がした。


「アル、ちょっ、お前どこで何してきたんだよっ!?」


 顔を上げたら、後ろ足に血のようなものがついているのが見えて驚いた。

 ブー


「こらっ! 白状しろっ!」


 ウサギはその場で俺の胸を足場にしてくるんっと飛ぶと、あっという間に駆けて逃げて行ってしまった。


「アールーーーーっっ!」

「あ、将悟(しょうご)おかえりー! 今夜はBBQだよ~」


 腕の中にウサギのミラを抱えたルームメイトの近藤和人(こんどうかずと)が速足でやってきた。どうやら呼びにきてくれたらしい。


「ああ、ありがとう……でもBBQって……」


 物資を載せたヘリが来るのは明後日のはずではなかったか。


「アルとモルルンたちがイノシシを捕まえたみたいだよー」

「……マジか……」


 俺は額を押さえて天を仰いだ。

 やらかすやらかすとは思っていたけどよりにもよってイノシシとか。

 無名島に来てまだ二か月弱だが、俺は今度はどこに謝りに行けばいいのかと遠い目をした。

 だが和人は平然としてきょろきょろ辺りを見回す。


「あれ? ところでアルは? 将悟を呼びに行ったはずなんだけど……」


 はっとした。

 ウサギ―アルは俺を呼びにきてくれたらしい。いつもいろいろやらかしてくれるから怒鳴ってしまったが、今日は違ったみたいだ。


「アルー! アルー! もう怒ってないから戻ってこーい!」


 シタタタタッ、タンッ! と音がして、背中のリュックに衝撃が……。


「ぶっ!」


 つんのめってこけそうになるのをどうにかこらえた。ここで怒ったらまたアルは逃げて行ってしまうだろうだろうと思ったので、とりあえず咎めないことにした。


「アル、リュックに穴開けるなよ~」


 そう言って俺はリュックにアルをくっつけたまま寮に戻った。

 残念ながらリュックには少しだけ穴が開いた。ま、小さいとはいえ角があるからしょうがないよな。


 でも……ウサギって額に角なんかあったっけ?



ーーーーー

毎日修正更新予定~。よろしくですー

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