レベッカ


「えーとお兄さんそれはなに?」


「お兄さん?

あっワシのことか。

これは次元袋と言って無機物であれば無限に入れることができる袋じゃな。


ちなみにこの中に入れておけば時間が経過することもないから重宝しておるわ」

自分が若返ったことを一瞬忘れたワシは思い出し、

袋の説明をする。


「そんなものが存在するなんて聞いたこともない!」


「それはそうじゃろ、

この世界の物じゃないからのう」


「この世界?」


「あっまずったわい。


まあよいか、

ワシはこの世界の住人じゃないんじゃ、

異世界から来たんじゃよ」

頭がおかしいと思われるかも知れないが、

ひとまず言ってみた。


「異世界?

じゃあお兄さんは勇者様なの?」


「うーん勇者ではないな。

元勇者じゃ」

顎髭を右手で触りながら言う。


「元勇者?」


「魔王を殺したご褒美にこの世界に送ってもらったんじゃよ。


おなごを抱くためにな」


「おなご?」


「この世界じゃ通じんか、

女じゃ。

お主のような色っぽいお嬢さんを抱きたいんじゃよ」

ワシはニヤニヤしながらお嬢さんを見つめた。


「お、お嬢さんなんてこんな年増に言わないでよ!

もう25歳なんだよ!

それに抱きたいだなんて、、

変態」


「かっかっかっ!

変態など言われたのは1000年ぶりだな!


それにワシからしたら25歳などお嬢さんに決まっておるわ」

人と話すのも久しぶりだが、

変態なんて言われるのは前の世界ぶりであるし、

年上好きだったので、

よくこのぐらいの遊女に相手をしてもらっていた。


「どうじゃ今晩共にしないか?


きっと満足させてみせよう」


「ちょっと勝手に顔を触らないでよ!


助けてもらったのは感謝しているけど、

そういうのは娼婦にしてもらいなさいよ!」

お嬢さんの顎をクイっと上げて誘うが、

パンっと頬を叩いた後離れたお嬢さんに文句を言われた。


「かっかっか!

なんとも気の強いおなごよ!


ますます気に入った!

お主の名前を聞きたい」


「レベッカよ!

あたしはあなたが嫌いよ!」


「レベッカじゃな!

南蛮人のような名前じゃがよい名前じゃ!


ワシの名前は春日 権兵衛。

権兵衛が名前じゃ!


レベッカよ宣言しよう、

ワシは必ずお主を抱く、

絶対にだ」


「絶対に嫌よ!

ゴンベエなんかに抱かれないわ!」


「よいよい!

いやよいやも好きのうちと言うからのう。

気長に待つことにするわい」


「そんなんじゃないわよ!

本当に嫌なんだから」

左手を腰に当てながらお嬢さんは言ってくる。



「まあこの話は今度しよう」


「しないわよ!」


「分かった分かった。


してレベッカよここからでなくてもよいのか?」


「あっどうしようこの場所がどこか分からないし、

レッドドラゴンが出る階層なんだからこの上の階層もきっと強い魔物が出る。

どうやって出よう」

頭を掻きながら心配し始めた。


「安心せい、

あのトカゲ程度のものならワシに任せよ。


無事にここから出してやるわい」


「出してくれても抱かれないわよ?」


「分かっておるわい。


それでは行こうとするかの」


「ゴンベエ、よろしくお願いします」

頼ってしまう自分が情けないのか少し元気がない。


「かまわん、

元気をだせレベッカよ。

ほらお団子でも食べよ」


「いいの!

おいしいー」


「かっかっかっ!」

すぐに機嫌を直したお嬢さんを見てワシは笑った。


階層登っていくと次々に異形なものたちがワシ達を襲ってくるが、

なんの問題もなく倒し、

次元袋にいれていく。


「ゴンベエどうやって倒してるの?

何もしていないよね?」


「やっておるわ。

ほれ」

ワシは手刀を振り斬撃を飛ばすところをレベッカに見せた。


「えーとそれはどんなスキルなの?」


「スキルとはなんじゃ?

これは身体能力だけでやっておるぞ」


「スキルはスキルだよ!

ステータスに表示されるやつだよ」


「さっき言ったじゃろ。


ワシはこの世界の住民じゃないのじゃからそんなものは知らんのじゃ。


おそらくすていたす?と呼ばれるものはワシにはないじゃろう」

あの世界でもそんなものは存在しない。


「じゃあレッドドラゴンもスキルも無しにあんな一撃を与えたの?」


「そうじゃな。


あのトカゲ程度なら刀を使わなくてもあのくらいはできて当然じゃろ」


「ゴンベエ強すぎない?」


「惚れたか?」


「惚れてない!

ただすごいなと思っただけ!」


「かっかっか!

いずれそのすごさを理由に惚れさせてみせようかの!


レベッカ」


「な、何よ?」

レベッカは少し警戒するように身構える。


「随分歩いたから眠くないか?」


「そりゃ眠いわよ。

でもこんなところで寝たら死んでしまうわ。


まさかゴンベエが寝ずに守ってくれるの?」


「それもできるんじゃが、

おなごをこんなところに寝かす趣味はないぞ。


ちょっと待っておれ、

お風呂や眠れるところを出すからの」

ワシは次元袋から3人ぐらいが入れそうなテントを出す。


「レベッカよ、

ワシはここに奴らが近づけないように結界を張るから、

先に入っていてくれ。

中のものは好きに使ってよいぞ」


「じゃあお言葉に甘えて、

先に入るね」

レベッカはテントの入り口を開けて入った後、すぐに出てきた。


「ゴンベエなにこれ!」


「テントじゃな」


「普通のテントじゃないわよ!

なんで見た目より広いし、

豪華なソファーやキッチンがついているのよ!

この見た目で高級宿より豪華なんてやばいわよ!」

とても興奮しているレベッカが捲し立ててきた。


「お風呂もついておるし、

ベッドもあるぞ」


「嘘!お風呂まであるの!

確認してくる!」


「かっかっかっ!

やはりおなごは風呂好きじゃの」

凄い勢いでテントの中にレベッカが入ったのを見て笑う。


「ゴンベエ大変!

お風呂の入り方がわからない!」

またこちらに戻ってきたレベッカが困っている。


「そういえばそうじゃったな、

ワシも最初にこれを使った時は分からなかったな。


レベッカ結界を張ったらすぐに行くから待っておれ」


「早くね!」


「早く教えねば怒られそうじゃの。


妖術『幻光』

これで何ものもここを見つけることはできんじゃろ」

テントの周りには霧が現れ、

この霧に触れたものに幻覚をみせ迷わせる。

霧は強い衝撃を受けるとそれを跳ね返すから、

範囲攻撃や突っ込んでくるものにも対応可能だ。

まあこれを破るものが来たらワシが気付くがな。


風呂の使い方を丁寧に教えたワシを叩き出し、

レベッカはお風呂を堪能している。

ワシはその間に今夜の夕食を作っている。


「ゴンベエ、いいお湯だったわ。

あと着替えもありがとう」

来ていた防具や服がボロボロすぎたので、

部屋の箪笥に置いていた女物の寝巻きを、

風呂の隣にある脱衣所に置いておいた。


「よいよい。

似合っておるぞ」


「あ、ありがとう。

生地もすごくいいし、

ワンピース型の寝巻きなんて初めて着たよ」


「わんぴいす?」


「あれ知らないの?

この形は昔勇者の恋人だった人が広めたワンピースって呼ばれるんだよ」

南蛮人の女の人が着ていたが名前までは知らなかった。


「ふむ、勉強になるの。


どれレベッカカツ丼ができたぞ。

お食べ」


「これは勇者様が好物って言っていたカツ丼ね!

まさか食べれるなんて!

ゴンベエはもしかして同じ世界から来たんじゃない」


「それはないのう。

これはこのテントの中にあった紙に書いてあったんじゃ。


見るまでは知らんかったからおそらく違うじゃろ」

カツ丼の作り方が書いてある髪を紙を見せながら答えた。


「ざんねーん。

勇者様の世界のこと聞いてみたかったなー、

まあいいや今はカツ丼を食べよう」


「そうじゃな、

いただくとしよう」


「うっま!

ゴンベエやばいよこれ!

これまでの食べた中で1番おいしい!


ゴンベエ!嫁に来てよ!」


「よいのか?」


「じょ、冗談よ。

本気にしないでよね」


「かっかっかっ!」

あまりの美味しさに少し変な思考をしたレベッカを見て笑った。


ご飯を食べ終え今は食後のお茶を飲んでいる。


「レベッカ、明日からこれを身につけるといい」


「それはドレス?」


「どれすとはなにかしらんが、

一応この服は防具じゃ。

ワシの手刀では斬れぬぐらいの性能を持っておる。


おそらく女物のじゃし、

レベッカに似合いそうじゃからあげるぞ」

赤い色をしたレベッカが今着ているわんぴいすなるものの形をし、

違う場所は両腕の部分にも生地があることと、

レベッカ着れば足首あたりまで裾があることだ。




「ゴンベエの手刀で斬れないなんて凄い性能ね!

もらっていいの?」


「ワシが持っておっても着ないし、

レベッカが着ればこの服も喜ぶだろう」


「もしかしてその服も前の世界で手に入れたの?」


「そうじゃ。


前の世界では獣を倒すと色々な物が手に入れることができたんじゃ。


この次元袋やテント、

このテントの中にある物もすべてそうやって手に入れた物じゃ。


じゃから全部タダで手に入れた物じゃ、

欲しい物があったらワシに言えばあげるぞ。


まあダメな物もあるがな」


「じゃあいらない剣とかある?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る