『開けてはならない』恐ろしさと哀しさ

 境界を隔てて立つ霊の恐ろしさが克明に描かれた怪談です。そして霊が手を振る理由に想いを馳せると哀しく、怖いだけではない感情も残りました。
 決して招き入れてはならない怖さ。憐れみから心を開いてはならない哀しさ。
 生者と霊、成仏し彼岸へと旅立てた魂とこの世を彷徨い続ける霊を分ける境界は何だろう。もしわたしが生者から死者へと越境するとき、果たして自分の魂はどちら側にいるだろうとまで考えさせられた怪談でした。