メイドインダンジョン

すずしろ ホワイト ラーディッシュ

第1話 職人の腕輪

「父さん、兄さん、ごめんなさい……」


 小雨の降る中、メイは、お墓を前に手を合わせていました。


 半年ほど前、鍛冶職人の父と、その技術を受け継ぐ兄が、盗賊に襲われて死んでしまいました。


 父の弟子たちは皆工房を離れていき、ハンターをしていたメイが、なんとか家を継ごうと奮闘しましたが、鍛冶の腕がないうえ、師匠もいない状態では何ともなりません。


 とうとう、最後の取引先から最後通告がなされたことを、家族が眠る先祖代々のお墓の前で報告していたところです。


 ピシャッ!! ドカン!!


 突如 稲光が走ったかと思えば、お墓に雷が落ちました。

 腰を抜かしたメイが目を開けると、お墓の前に子狐と腕輪が現れていました。


「やぁ、君がメイだね。ぼくはイナリ。職人の腕輪に宿る妖精だよ」

「子狐がしゃべったわ……」


「やだなぁ、ぼくは妖精だから言葉くらいしゃべれるよ。それより、父君、兄君とご先祖たちからの贈り物だよ。頑張っているメイにってさ」


 腰を抜かして呆けているメイの前に、イナリは腕輪を差し出すと、さらに話を続けます。


「これを着ければ、カジ職人の技を覚えることが出来るよ」

「えっ? 鍛冶職人の技を……」


 職人の技と聞いて、メイは正気を取り戻したようで、手渡された腕輪を食い入るように見つめました。


「父さんと兄さん、そして、ご先祖様からの贈り物と言ったわね」

「うん、信じるかどうかは、君次第だよ」


 メイは、再び腕輪をじっと見つめました。


「今の私に、ほかに道はないわ」


 真剣な眼差しでそう言うと、メイは腕輪を右腕に通します。

 腕輪はメイの腕に合わせてサイズを変えて、ぴったりと腕に嵌りました。


「うん、使用者登録完了だね。これでメイ以外には使えないよ」

「なんかアーティファクトみたいね……」


「早速、使ってみようか。まずは腕輪に手を当ててみてよ」

「こうかしら?」


 イナリの言葉に、メイは左手で腕輪に触れました。

 すると、腕輪から魔力線が伸び、目の前に画面が現れました。


「なに、これ?」

「ふふっ、腕輪の機能の1つだよ。使い方を教えるから、よく聞いてね」


 突然のことに驚くメイに、イナリは画面の見方と基本的な操作方法を教えてくれるのでした。


 振っていた雨もいつしか止んで、雲間から日差しが注がれる中、メイは腕輪の使い方を学ぶことに集中するのでした。

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