第26話

俺が気分上々!!で席に帰ると、肘をついて俺の方をガン見してくる男が話しかけてくる。

それはもちろん晃である。


「お前、その弁当どうしたんだ?答え次第では殺す」

「沙和ちゃんから貰ったんだよ!愛妻弁当だよ!」

「お前……幸せ者だなぁ。ムカつく気持ちも無くなったわ。俺も弁当作ってくれないかなぁ。可愛い美少女ちゃんが……」


そんなことを言っていると、朝のホームルームが始まった。始まって二日目ということで、委員会決めがあるらしい。


先生がみんなに声をかける。とりあえず滅多に活動がない委員会を選ばなくては……。じゃないと早く帰れないし、沙和ちゃんと遊ぶことも出来ない。


「まずはクラス委員長からだなあ……。やりたいやつ手を上げろー!!」


これだけは避けたいと思っていたのだが、クラスにはやる気ある人が少しはいたらしくすんなりと決まった。


そこから上手い具合に、委員会が埋まっていった。あとはアルバム制作委員にでも入れば行けるだろ。


「あとは……図書委員だな。女子は決まっているから、男子だけだな。誰かやりたいやつ…」


そんなふうに先生が言う。図書委員か。毎週水曜日。確実に放課後を潰される上に、お昼に定期的に借り出しを食らうと噂の委員会。


男子が誰も行きたくないっていうのは必然である。ちなみに女子が1人決まっているのは前の席の中尾さんだった。


「誰もいないならくじ引きで決めるぞ……」


そんなことを言い出したが、誰も手を挙げなかった。これっていちばん気まずいのって中尾さんなんだよなぁ。


別にそんなことないのに、自分が決まってるからみんなが嫌がってるのかって思っちゃうし。小学生の時の俺ならそう思ってたし。


行ってあげたいけど、俺には沙和ちゃんと遊ぶ放課後があるんだ……。すまない、中尾さん。


「じゃあくじ引きで決めるから、男子1人ずつ前に来いー!」


召集がかかったので、俺は前に出ていった。


後ろで既に体育委員に決まってしまっていた、晃が「図書委員に立候補したい」とうるさかったが、無視をしておいてやった。


俺は最初の方に引いて案の定ハズレ。まぁ、当たることが珍しいよな、と思いながら席に帰ろうとするが、やはり思いとどまってしまう。


もしこれで無理やり図書委員になったようなやつがペアで一年間、一緒ってどうなんだ?


そんなふうに思ったが、仕方ないことだと俺は割り切ったはずだった。


「そのくじ変わってくれないか?」


俺は赤い丸印が入ったくじを黙って持っていた男子に声をかける。見るからに運動部で、放課後は外せない用事があるやつだった。


「まじで!変わってくれんの?助かるわ……だるかったんだよぁ。図書委員。このことは秘密な、怒られるの嫌だし」

「了解した」


俺はくじを交換して、先生の方に渡しに行った。そのくじを見ると黒板に俺の名前を書き込んだ。


俺が席に帰ると、後ろで晃はニヤニヤしていた。無性に腹が立つ顔だったので、シバいてやろうかと思ったが、そのまま席に座った。


「さすがイケメンくんだなぁ。いいことしてんのにバレないようにしちゃ、お前も無理やり当たったやつみたいになったぜ?」


一部始終を見ていたのだろう晃が意味ありげな言葉を呟く。背中を人差し指でぐりぐりしてくるが、図書委員になったことへの嫉妬だろうか。


「いいんだよ、別に」


俺は特ににも思っていない。ただくじが当たってしまったやつを演じることにした。そんなこんなで、委員会が全て決まった。


みんなが一段落して団欒に耽っていると、後ろを振り向いた中尾さんが言うのだった。


「ありがとうございます。夏目くん」


可愛らしい笑顔で感謝の意を伝えてくる中尾さん。俺にはなんのことかわかっていたが、バレていたのか分からなかったのでとぼけることにした。


「なんの事?俺はただ図書委員にくじで当たっただけで……」

「それでもです。図書委員頑張りましょうね」


やっぱりバレていたのか……。恥ずかしい。


バレていたのにスカして座っていたなんて。ただのナルシストじゃないかぁ……。


俺は軽く自己嫌悪に浸りながら、机に突っ伏していると目の前に飴玉が置かれた。


「感謝の気持ちです。美味しいんですよ、いちごヨーグルト味」


そう言って、ニコッと笑った中尾さんがいた。金髪の髪が微かに揺れて、シャンプーのいい匂いが鼻をくすぐる。


こんな人が多分、ゲームとかではヒロインって呼ばれるんだろうなぁ。俺は漠然とそう思った。


まぁ、何にせよ、中尾さんが喜んでくれているならこれでいいか。


図書委員になったことに独自で結論づけた夏目翔であった。


◆◆

星が欲しい。

面白くかけているのか不安なので感想いただけると元気になります……。

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