第19話

俺が満面の笑みで沙和ちゃんの方をみてやると、顔を真っ赤にした沙和ちゃんが枕を盾にしてひょこりと顔を出して言う。


「い、意識とかそういう問題じゃないし!はっきりいっておかしいよ!絶対におかしい!」

「へぇー、じゃあガキンチョ相手に顔を真っ赤にしちゃってる沙和ちゃんはどういうことなのかな?」

「こ、これは熱いから……そう!熱いから!二人で寝ると熱いから、ね?ソファに戻ろうね?」


そう言って、諭すようにして声をかけた。そんな忠告今の俺が聞くわけが無いだろう。俺は若干、ニヤついた声で言う。


「大丈夫だよ、どうせ汗だくになるんだから」

「ベッドで汗だくって……、だからダメだって!そういうことは!」


枕で俺の事をポカポカ叩きながら、言い放った。俺は終始、ニヤついた顔でしっかりと沙和ちゃんの揚げ足を取りに行く。


「え?普通に分厚い布団を深く被ってたら、汗をかくって言いたかったんだけど?」


俺がそう言うと、元々赤かった顔をより一層赤くした。その顔は小さい頃は見れなかった恥じらい顔で、また彼女を好きになる。


「ねぇええええ!?お姉ちゃんをからかってそんなに楽しい?」

「いや、楽しんでるわけじゃない。俺は本気だよ」

「う、嘘だっ!ったく、もう!」


そう言って、ぷいっとそっぽを向いてしまった。そんな沙和ちゃんに俺は真面目な声で、ひとつトーンを落として言うのだった。


「俺はいつだって真剣だよ。ほら、おいで」


俺はそういうと、両手を広げていつでも沙和ちゃんを受け入れる姿勢を展開した。そんな声と仕草に、反応した沙和ちゃんは周りをキョロキョロとしてから言う。


「あ、へ、あぅ……」


沙和ちゃんは変な声を漏らしながら、少し考え込んでからポケットに手を伸ばすと、パシャリと写真を撮った。


「これ、翔のお母さんに送るから」


そう言って見せてきたのはベットの上で手を広げる少年。間違いなく俺であり……。非常にまずい状態。


「……襲われるって言うから」


それだけ言うと、勝ち誇ったような顔をうかべた沙和ちゃん。そして黙って俺はベットから降りた。


だって知られたら、この同棲を辞めさせられるかもしれない。そう思うと、冷静にベットから降りることが出来た。


「じゃあ、おやすみ」


俺は少ししょんぼりとはしたが、脈は無いわけではなさそうなのでこれはこれで良かったと思っていた。


でも沙和ちゃんは少しあわあわ、と手を動かしてからコホンっと、咳払いをすると両手を広げて言った。


「ほら、おいで。翔」


え……。俺の思考はストップした。


♣♣

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