第4話

どんどんと変わっていく沙和ちゃんの顔に少し不安になる。その不安がそのまま声に出ていたみたいだ。


「俺と住むのは嫌?」


俺がそう言うと、沙和ちゃんは首を横に振った。そして申し訳ないくらいの笑みを浮かべて言うのだった。


「男の子と住むなんてしたことないから、ちょっと緊張しちゃって·····あはは」

「それは俺もだよ」

「そ、そうだっ!立ち話もなんだし、入ってよ。ってここから、ここが翔くんの部屋になるんだけどね」


そう言って、招き入れてくれる沙和ちゃん。彼女の部屋の間取りは1LDK。9畳のリビングに6畳程の和室。バルコニー。キッチンがあった。


「あはは·····散らかっててごめんね。まぁ、翔くんならいっか」

「沙和ちゃん·····これは女の子として、どうなの?」

「そ、そんなにまずい!?やばいとは思ってたんだけど·····」


そう言って、テーブルの上に置いてあったポテトチップスを輪ゴムで止めて冷蔵庫に入れようとする沙和ちゃん。


「汚い訳じゃなくてね?全体的にものが無さすぎると言うか、女子高生だよね?」

「そ、そうだよ?あれでしょ。女の子らしくないって言いたいんでしょ·····?私がぬいぐるみとか笑えるよ?そんなの」


そう言って、笑う沙和ちゃん。さっき、せっかく閉めたポテトチップスの袋をまた開けて食べ始めた。


そう言われれば服もジーパンと、パーカーというオシャレとは言えない格好だった。沙和ちゃんが着たらなんでも可愛いけど·····。


「けど俺にクマのぬいぐるみ、自慢してたじゃん」

「そ、それは昔の話でしょ。あのころも私、男っぽいって言われてたし?喧嘩だって、今でも翔くんに勝てるかもよ?」


そう言って、シャドーボクシングっぽいのをする。あの時と今とじゃ、体格も変わってしまったし·····。それに筋肉質だった沙和ちゃんの腕は、いまは可愛らしい女の子にシフトチェンジしていた。


軽く俺の事をパンチして来る沙和ちゃん。痛いと思うことはないが、俺は彼女のほうをちらっと見ると、ニヤッと笑ってもう一度振りかぶってパンチをかまそうとした。


その行動をよんでいた俺は、沙和ちゃんの拳をパシッと受け止めてしまうのだった。その手は細くて小さて·····なんとも言えないやばさがあった。


「あちゃー·····。捕まっちゃった。強くなったんだ。前はあんなに弱かったのに·····!」


悔しそうな顔を浮かべる沙和ちゃん。そんなイタズラな笑みは前と変わっていない。でも成長は感じれる。指が違う。女の子のものだ。


ぶんぶんと手を振って、俺の手を振り払おうとするが、せっかく捕まえた沙和ちゃんを離すわけがない。


「ちょ、ちょっと?私の手を離していただけると嬉しいかなぁ……」

「沙和ちゃん、俺の手、大きくなったでしょ?」

「う、うん……。本当に大きくなったよ。もうこれ以上はやば、やばい!」


そう言って、俺の手を振りほどいたのだった。顔赤くして、自分の手を胸の前においてまた悔しそうな顔をした。


「そうだった……、私の島は距離感がバグってるんだった」

「……ん?なんかいった?」


俺がそう言うと、沙和ちゃんはピンッと人差し指をたてて、先生のように話す。先輩としての威厳を見せるように。


「お姉ちゃんから、翔にアドバイスがあります。絶対に島でのコミュニケーションを使っては行けません」

「え……なんで?」

「それは私が禁止するからじゃ、ダメ?」


コテンと、首を傾げる沙和ちゃん。俺は脊髄反射で答えを出していたのだった。


「沙和ちゃんが言うなら全然OKです!」


♣♣

星を僕にください!





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