第2話

俺は中学校に入ってから2年生になるまでは楽しかったけど、その後は無気力なまま過ごすことになった。何故かって、沙和ちゃんは島から出ていってしまったからだ。


絶対に高校生になったらここから出て、沙和ちゃんと同じ高校に通うんだ。そう決めて、勉強は欠かさずにやっていた。


「夏目先輩だ!かっこいー!尊すぎる……」

「それなぁ·····。なんで彼女作らないんだろうね?」

「クール系男子って惹かれるよね·····」


そんな会話がきこえてくる。俺に聞こえるように行っているのはわざとなんだろうか。見た目に気を使っているとはいえ、さすがに恥ずかしい·····。

けど、慣れなきゃいけない。だってあのさわちゃんの横に並ぶ男なんだから。そう思って、拳を握っていると、後ろから背中を思いっきり叩かれる。


「おいっ!翔!モテ男は辛いなぁ!」

「羨ましいぜ!あれって一年生の麗日ちゃんだろ?めっちゃ美人じゃん!」


この二人はかつては俺をいじめていたやつ。今では親友とでも言っておこうか。俺の過去を知っている数少ない友達である。


「俺には心に決めた人がいるんでな?」

「あの鬼ババアか?」

「鬼·····考えるだけでも身震いするぜ·····」


そう言って、笑う二人組。俺はそいつらに睨みを効かす俺。沙和ちゃんの悪口だけは許さない。今ではこの二人と立場は同じくらいになった。というか·····。


「おい·····翔。お前、どんどんあの人に似てきてるぞ」

「え?まじで。嬉しい!」

「·····表情コロコロ変わりすぎだろ」

「ていうか褒め言葉で言ったわけじゃねぇし。」


そう言って、また笑う二人組。これだから憎めないんだよ。というか、沙和ちゃんに似てるってめっちゃ嬉しい。夫婦は似てくるって言うし。


「とにかく俺は御坂高校に行くから。お前らとはお別れだな」

「·····翔と会えなくなるの寂しーよぉぉ!」


一人の男が抱きついてくる。お前なんかに止められて誰がここに止まるか。そんなことを思いながらも、少し寂しいとは思う。


「落ちたらここに残ってやるから安心しろ」

「そっか。じゃあお前の邪魔をするな?」

「はぁ?」

「そんなことをするやつだと思うか?俺が」

「思う」


おいっ!、とツッコミを入れてまた笑う。こんな関係になるとは思ってなかったが、やっぱりこいつらのことは好きだわ。友達として。


♣♣

俺の家は古民家だった。平屋のいかにも島の家!みたいな感じでお母さんもお父さんも優しく穏やかな人だった。


ご飯を皿に盛りながらお母さんが言う。


「いよいよ明日ね·····受験日。あんたはやれることはやったんだから受かるわよ」


おかずのカツをご飯の上に置いて、ステーキを頬張っているお父さんは真剣な顔で言う。

テキにカツ!

なんていう昔風情なダジャレを、今でも使うあたり田舎だなぁ、と思う。


「お前がここからいなくなると思うと清々する。……まぁ、頑張ってこいや」


どちらも両親なりの励ましや、勇気づけの言葉。受験を控えた俺にとっては心に響く言葉だった。


「絶対に受かるから」

「·····沙和ちゃんのためだもんね?」


きゃー、と歳も歳なのに黄色い声を上げるお母さん。こういうところは嫌いであり、好きでもある。


「は、恥ずかしいからやめろ、おいっ。」

「お父さんは一途な男は好きだ。ちなみにお父さんも一目惚れで結婚したのが、お母さんなんだからな?」


そう言って、ご飯をさらに頬張るお父さん。横でまた歓声をあげるお母さん。こんなウザイ光景を見るのも無くなるのかと思うと、寂しくなった。


「まだ受かるか分かってないんだから、寂しいなんて気持ちはダメよ?」

「わかってるって。サポートありがと。お父さん、お母さん」


俺はごちそうさまをして、そのままベットへと向かった。明日の試験に向けて。


「大きくなりましたね、お父さん?」

「あぁ。寂しくなるな」

「そうですねぇ?貴方みたいに緊張しなかったらいいですけど」

「俺は緊張なんてしたことない」

「あら?プロポーズの時に指輪を焦って落としたのは誰でしたっけ?」

「……あぁ、もう」


そんな会話がリビングでは、繰り広げられていた。


♣♣

続きが見たいという方は星を僕にください。


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