つながり
目が覚める。
もう目覚ましもかけていない。
夜が明けて、目が覚めて、しぜんと起きられる。
心がとても軽い。
よし、と反動をつけてベッドから降りた。
朝ごはんを食べてから、ゴミ袋を出してきて、手当たり次第に部屋に散らばったコンビニ袋を放りこんでいった。
ついでにいらないものも集めていく。レシートとかいらなくなったチラシとか。
ゴミ袋が三つになったところでかなり机の上がすっきりし、床が見えてきて、満足した。
次は脱ぎ捨てた服を集め、洗濯機をまわす。
取りこんでいなかった洗濯物もたたむ。
お昼近くなったから、近くのスーパーに行った。
レトルト食品や冷凍食品を中心に買う。
自炊する元気はない。
家に帰ってきたら、洗濯物を干して、ご飯を食べた。
こんなに自分の事をできる休日なんて、いつぶりだろう?
期間が決まったことで逆にやる気が出てきたのをひしひしと感じている。
結局は仕事人間だからなあ。
そんなふうにしみじみとしていると、ふいにスマホが震える。
いつもはサイレントモードにしているからバイブも鳴らないのだけれど、人事の人から連絡が来るかも、とマナーモードを外していたのだ。すっかり忘れていた。
画面を見る。友達からだ。
高校から大学まで遊んでいた友達。今でもマメに連絡をくれるのはこの子くらいだ。
定期的にくる「元気?」というメッセージ。
雑談、というよりも生存確認。
いつもは「元気だよー」と返して終わりなのだけれど、今日はせっかく時間があるのだからと少し長文を打った。
「元気だよ! 実は一週間くらい有休もらえたから家の片付けしてるー。」
送信。
すぐに電話が来た。
『ちょちょちょちょ! おーい、どういうことだーい? 説明しろー?』
「あはは……私もよくわからないんだけど。」
『え、え、え。ちょっと待って。招集! 招集するわ! どうせ今夜暇でしょ?』
「う、うん。」
『じゃあいつものとこで集合ね! 仕事終わったら連絡するけど六時過ぎには合流できるわ!』
なんてホワイトな会社に勤めているんだろう。うらやましい。
『とにかくおしゃれして来い! せっかくだから!』
「うん。」
『じゃあ後で!』
一方的に電話は切れた。
仕方ない。私はしぶしぶと立ち上がり、しばらく開いていないクローゼットに手をのばした。
ちらりと見た埃だらけの姿見に、口元のにやけた自分が映っていた。
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