なにもしたくない。

水沢妃

 

トゥルーエンド

さいしょ





 ああ、疲れた。





 今日も終電に間に合わなかった。





 電気を点けて、ベッドに倒れこむ。


 いくらやっても終わらない仕事。

 すぐに怒鳴る上司。

 仕事を押しつけてくる後輩。


 同期はみんな辞めてしまった。


 ……いつまでこんな生活が続くんだろう。


 スーツを脱ぐ元気もなく、ぼんやりと部屋を眺める。

 最後に掃除したのはいつだったっけ?


 干したままの洗濯物。

 転がっているペットボトルとコンビニの袋。

 使ったまま放置している食器。

 積んだはずがいつの間にか崩れている雑誌。

 脱ぎ捨てられた昨日のブラウス。


 もう、足の踏み場もない。

 物がないのはベッドの上だけ。


 起きて着替えて仕事に行って、帰ってきてご飯を食べてシャワーを浴びて寝る。


 それすらも、ここ数日はままならない。



 帰ってきたものの、持ち帰ってきた仕事がある。

 ぼんやりしすぎてご飯を買うのも忘れてしまった。

 このまま寝ていたら、スーツに皺がついてしまう。



 そんな普通のことも、霞がかかったような頭では考えられなくて。





 なんとか枕元に手をのばし、電気だけを消して瞼を閉じた。

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