第8話

   

「中野が死んだ!?」

「ああ、そうだ。借金で首が回らなくなって、首を吊って自殺したらしい」

「どうして……」

「あいつ、前に『もう食費の心配はしなくていい』って言ってただろ? 実はそれが間違いで、食べた分だけドンドン金が引き落とされてたそうだ」

 無限冷蔵庫は無限に食材を生み出すと同時に、その分の食費が自動引き落としとなり、銀行の残高が減っていく。

 そんなシステムだったらしい。

「中野は、それを知らずに……?」

「そのようだな。無料ただだと思って、高級食材ばかり食いまくってたから、ただでさえ少ない預金が、湯水のように減っていって……。あっという間に残高ゼロになったそうだぜ」

「でも、残高ゼロになれば、そこで終わりじゃないのか?」

「いや、そこからはローンみたいになって、マイナスになっていくそうだ」

 そういえば、銀行預金には、そんなシステムもあったはず。銀行で借金するなんて私には想像もつかない出来事であり、今の今まで念頭になかったが、なるほど、預金はマイナスになり得るのか。

 しかし……。

「銀行のローンって、上限があるんじゃなかったか? 『首が回らない』ってほど大きな借金になる前に、ストップされるだろう?」

「俺もそう思うんだが、そこも『無限冷蔵庫』の魔法の一環じゃないかな。ローンの限度額を超えて、借金が無限に膨れ上がったらしいぜ。赤字の青天井だ」

   

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