第2話

   

「美味いな、これ!」

 口に入れた途端、そんな言葉が飛び出してしまう。

 私が日頃買って食べる肉より、明らかに上等なものだった。

「そうだろう? なにしろ100グラム2,000円の高級肉だぜ!」

 驚きの価格だ。私がスーパーで見かける肉は、100グラム1,000円までだから、その2倍ではないか。

 しかも、100グラム1,000円でも『スーパーで見かける』だけであり、私自身が買う肉は、それより何ランクも下の肉ばかりだった。

「おい、中野。どうしたんだ?」

「何かの景品で当選したのか?」

「せっかくの肉、独り占めしなくていいのか?」

 友人たちも不思議がって、次々と質問を浴びせかける。

 しかし中野は余裕の笑顔で、首を横に振っていた。

「景品じゃないぞ。ちゃんと自分で買った肉だ。しかも毎日のように食べてるんだぜ」

   

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る