第17話 モンスターペアレント? なんですのそれ? モンスターお嬢様ですわ!

恐る恐る凉坂さんに近づいて、彼女が見ていたものを同じ角度から視界に入れる。

そこからは部活をしていると思われる複数人の女子生徒たちが見えた。


彼女らが何をしているかは分からないが、どうやら人がいないと嘘を付いたことに凉坂さんは大変ご立腹なようだ。

「啓さん、ちゃんと説明してください! なぜ私に嘘を付いたのですか?」


凉坂さんが足を地面に強く叩きつける。ドン、という強い音と共に地面が軽く揺れた。

「私、あまり暴力は好きじゃないのですが、啓さんに隠し事されるだなんてことがあったらやむを得ず拳で解決してしまうかもしれませんわ」

顔を掴まれて強制的に目を合わさせられる、僕は動くことが出来なくなった。力で負けているのはもちろんの事、蛇に睨まれた蛙のように体が危険を感じて筋肉が硬直をして抵抗すらできない。


「彩様、そんなに啓様を責めては可哀想です。啓様はただでさえお友達が少なく、ましてや女の子のお友達がいるわけないじゃないですか」

さっきからやたらと毒舌だが、今は話を合わせておくのがよさそうだ。


「そうそう、あの子たちは全く知らない子なんだ、あんな部活あるのも今日初めて知ったし一人も誰か分からないんだ」

必死に言い訳をしていると、徐々に凉坂さんの般若のお面が落ちていき可愛らしい顔へと変貌をする。


「私決めましたわ!」

どうやら何かを決めたらしい。

「私が啓さんに相応しいお友達を選ぶので、啓さんにはその方と仲良くなってもらいますのよ!」

なんだその強烈なモンスターペアレントみたいな思考は。しかも何を言っても聞かないというような顔をしている。


「いやいや、ちょっと待って、確かにさっき見た子達の中には友達はいなかったけど、別に友達自体には困ってないから、大丈夫、大丈夫だから!」


「啓さん、私にだけは嘘を付かなくて大丈夫ですわ! 私はどんな啓さんでもちゃんと受け入れて差し上げますわ! だから、私の事を信じて欲しいですの」


「何も分かってない、凉坂さん一回落ち着こう。お願いだから、そうやって肩を掴んでブンブンてするのやめて」


「啓さんが受け入れてくださるまで、私は手を止めたりしませんわ! だって私の事を……。 いえ、私は啓さんにお友達を作って欲しいんですわ!」

どうしよう、美月が言っていた冗談をスルーしてたら凉坂さんが勘違いしてしまった。

肩を揺らされて間接的に脳が揺れていく。ヤバイヤバイ、というか肩を掴む力が強い、強いというより、もはや痛い。


「分かった、分かった、受け入れるからストップ、ストップ」

考えるより先に口が動いてしまった。体を離されてから冷静さを取り戻す。これ以上パワータイプのお嬢様の被害者を出さないのと、自分の名誉のためにも早く勘違いを訂正しなければ。


顔を上げて言葉を発しようとした瞬間、視点が下を向いて、僕の体が移動を始めた。

もちろん自分の足で動いてるわけではない、そして、お腹に二の腕の柔らかい感覚を感じる。


「では、さっき見かけた方々の中から啓さんのお友達に相応しい方を探しに行きますわよ!!」


上の辺りから声が聞こえた時点でようやく理解した。


ああ、これお嬢様に抱えられて運ばれてる。

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