第11話 女学院まではバイクで30分くらいですわ!かっ飛ばしていきますわ!

「啓様大丈夫でしょうか、啓様みたいなゴミムシでも疲れたという言葉を言われたら私はメイドですのでお手伝いをするしかありません」

ドアノブが回されてドアが開く、どうやらメイドさんはドアを壊す以外の侵入方法を知っているらしい。


「ちょっと疲れちゃって、というか呟いた程度のボリュームなのによく気が付いたな」

「私はメイドですのでどんな言葉も聞き逃しません。何かあったら私に仰ってください、ついでに疲れたことを全部私のせいにして構いませんから、私を都合の良い女にして構いませんから」

願望が入っていた気がするのはきっと気のせいだろう。


まあ気になる事は色々ある、口が悪く恐らくドMという部分を除けば彼女はお嬢様よりは話が通じやすそうだ。親も頼れない、友人もきっと信じてくれないこの状況ならば確かに彼女は相談相手としては一番なのではないか?


「なあ、美月教えてくれ」

「はい、啓様なんでしょうか?」

「凉坂さんは何で僕の家に?」

凉坂さん側の美月にしてもいい質問なのかは分からない、でもこれから本当に一緒に生活をしていくとなっても彼女の事は気になる。


「覚えてらっしゃらないのですか?」

美月はかなり呆れたような顔をする、そんな大切なことも忘れてしまったのかいう風な、先ほどまでの口だけ軽蔑でなくでない本気の蔑みが入った感じ。


「ごめん」

「彩様はじゃあ何のために……」

怒りの表情が彼女から見え隠れする、自分の性癖を言うときも口で僕に対して軽蔑するときもこんな瞳も表情もしてなかった。


「――まあいいです」

一度深呼吸をした美月はいつも通りの表情を取り戻した。

「啓様、分かっているとは思いますが私は誰よりも彩様の見方でなければなりません。そのため彩様が率先して話したがらない事をメイドの一存では話すことが出来ません。大変心苦しいですが申し訳ございません」

深々と美月が頭を下げる。誠意というのが視覚を通して脳に伝わっていく。

確かに凉坂さんが隠していることを他人から聞くっていうのは確かに野暮だ。


「ごめん美月、それもそうだよね、思い出せるように頑張るよ」

「はい、私こそお伝え出来なくて本当に申し訳ございません。啓様のイラつきやストレスの解消は是非私にお願いします。それもメイドの務めですので」

ふふ、と美月はクールな顔を崩さずにまた冗談めいた言葉を話した。


それはそれとして、聞きたいことは他にも腐るほどある。彼女に聞いても問題がない程度の事を今のうちに聞いておくことにしよう。

「それにしても美月達はどこの高校に通ってるんだ?」

「白金女学院です」

「まあ予想は出来てたけど、めちゃくちゃお嬢様高校だね。でも本当にここに住むなら少し遠くない?」

「問題ございません、私のバイクで一っ飛びです」

バイクなんだ、バイク通学OKなんだあのクラスの女学院が、というかお嬢様なのに専属ドライバーいないんだ。


「バイクなら30分くらい?」

「私のバイクはかなり早くてカッコいいので30分せずに尽きます。啓様みたいなモテない方がデートに使いたいときは言ってくだされば、貸して差し上げますのでその時はお申し付けくださいね」

「ありがとう美月、でも免許も運転方法も知らないから遠慮しておくよ」


「そうですか」と彼女は露骨にがっかりとした顔をする。

なんというか、この扱いにくいメイドとは少しだけ仲良くなれそうな気がした。

「まあでも、私たち明日から啓様と同じ高校に行くので関係ありませんがね」

このメイドは何でこう大切なことを後だしで話してくるのだろうか!!!!!


「美月」

「はい、なんでしょうか?」

「大事なことは早く言ってくれ!!!!」

その大声を聞いた美月の顔がかなり嬉しそうだったのは言うまでもないだろう。

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