第2話 ギルド


 アル達はギルドへ辿り着く。そして、ギルドの中も今日はお祭り騒ぎだった。


「あれは凄かったな~」


「オーバーヘッドキックは最高だよな!」


「あの高い打点からは、キーパーも一歩も動けなかったな~」


 ギルド内にもモニターは設置されているので、スカイボールの話題で持ちきりだった。


「アル~。やっぱりちょっと見ていこうよ~!」


「まだ試合は始まったばかりだろ! あんなのを見ていたら、あと2時間は掛かるぞ」


 スカイボールの試合時間は凡そ2時間だ。延長戦を含めると更に時間が掛かる。


「スキル適正をやった後は、付き合うから~」


「絶対よ!」


(そこまで見たかったなら、家で見てから来れば良いのに…)


 アルは呆れた顔で振り向くが、ミカは興奮していたのでアルの表情には気付かなかった。





 アル達はギルドのカウンターへ訪れた。


「すみませ~ん。適性検査を受けに来ました~」


「は~い。ちょっと待ってね~」


『ワァーーー』


 ギルドの奥からもスカイボールの歓声が聞こえてくる。


(今日ならこっそりと、適性を受けられると思ったのに…)


 なかなかカウンターに訪れないギルドの職員に、アルはうんざりと言った顔をする。


「あらあら、ごめんなさいね。丁度良いところだったから目が離せなくて」


 何の悪気もない顔をして奥から女性が現れた。この女性はリーザと言う。歳は20代後半でアル達とは知り合いだった。普段からラフなTシャツを着ており、大人の色気を漂わせている。


「今日も二人で一緒なのね! お姉さんは焼けちゃうわ~」


「ちょ、ちょっと、やめてください! そんなんじゃありませんから!」


 ミカは焦りながらも顔が赤くなる。何故ならアルの事を少し気に入っているからだ。


「はいはい、ごちそうさまでした。で、適性検査だったわね? すぐに用意をするからちょっと待っててね」


 リーザはカウンターの奥へと向かう。すると、またしばらく帰ってこなかった。




(はあ~。今日は失敗だったな~)


「キャー! 凄いわよ! アルも見て!」


 ぐいぐいとミカに体を揺さぶられ、リーザはカウンターに戻って来ず、アルはスキル適正のことが段々どうでも良くなってきた。


 すると、リーザがカウンターの奥にあるモニターを名残惜しそうに振り返りながら戻ってきた。


「凄いわね~。アル君もスカイボールの選手になる?」


「ならないよ!」


 アルはなかなか始まらない適性検査に苛立ち、顔をそむける。


「アル君のおじいさんは凄い人だったから、あなたもきっと凄い選手になれると思ったのに~」


「じいちゃんのことは良いから! それよりいい加減、早く終わらせてくれ!」


「はいはい。仕方ないわね~」


 おじいさんは若いころは凄かったのだが、アルはまだそれを理解していなかった。


「それじゃあ、ちょっとチクっとするけど、我慢してね」


 エリーザは適性検査のための道具を取り出す。


 この道具は洗濯ばさみのような形をしている。そこに小さな針が付いおり、少しだけ採血を行う仕組みになっていた。


 アルは左手をカウンターの上に置き、人差し指をその道具に挟まれる。


『ピピ!』


「次はミカちゃんね。アル君と同じように手をここに置いてね」


 ミカもカウンターに左手を置き、装置に指を挟まれる。


『ピピ!』


「はい。これで終わりよ。検査結果はすぐに出るから、スカイボールでも見ててね」


 リーザは足早にカウンターを離れると、また奥のモニターへと向かった。


(大丈夫かな…?)


 アルの心には不安しか残らなかった。


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