第14話 宝物

私の学校では、テスト成績によってクラス分けがある。

模試でトップ50を取ったら、成績上位者だけの集会がある。

もちろん翔くんと隼人くんは常連で、私は一度も参加したことがない。

最近猛勉強を始めてた。

あと一週間ではテストも模試がある。

一緒のクラスになりたいもん。

体育祭でかなり疲れ果ててたけど、朝早く起きて、机に向かった。

波に乗った私は、気づいたら5時間が過ぎていた。

いつもなら座って教科書開いただけで眠気に襲われるけど、集中したら時間なんてあっという間だ。

「誰か数学教えてくれないかな。」

一瞬、頭に浮かんだのは、翔くん。

今まで勉強聞いたことなんてなかったけど、いいかな?

ちょっと不安だったけど、気づいたら手が勝手に動いていた。

送信ボタンを押す手が震える。こんなに緊張したのは初めてだ。

『翔くん。急にごめんね。数学の問題教えてもらいたくて!』

1時間後。

―ピコン。

メッセージ一件:瀬戸内

『分かった。どこか教えて。』

いつも通りそっけなかったけど、嬉しかった。

早速問題を送ると、手書きで書いてくれた丁寧な解説が写メで送られてきた。

『分からないとこあったら聞いて。』

翔くんが手書きで書いてくれたなんて、嬉しすぎる。

何度見てもとってもわかりやすい。

翔くんが書いてくれている姿を思い浮かべたら頑張れる。

ノートの一部でも、翔くんからもらったものはなんだって私の宝物。


数時間たったころ、

『解けた?』

あっさりしてるけど、ここまで気にしてくれるなんて嬉しい。

やっぱり翔くんのそっけない口調が一番いい。

大好きでたまらない。

諦められない。離れられないよ。

また、期待しちゃうじゃん。


それからも数学の難しい問題は翔くんが丁寧に教えてくれた。

テスト2日前、

『ありがと。忙しいのに』

『大丈夫。頑張れ。』

そんなこと言われたら頑張らないわけにはいかない。

テストまで、寝る間も惜しんで一生懸命勉強した。

高校受験より勉強したんじゃないかな?きっと今までで一番。


一週間後のテストも模試も最高の成績だった。

学年で100番台だったのに、学年掲示板に名前が載るほど伸びた。

特に翔くんが教えてくれた数学は90点越え。

模試の成績も出て、いつも通り、上位者集会の名簿も張り出された。

ドキドキしながら見に行くと、

「え、りあ入ってるじゃん?頑張ったね!」

心優はすごい喜んでくれた。菜摘ちゃんも他のクラスの子も褒めてくれた。

「ありがと心優。頑張った!」

もちろん嬉しい。

誰にも言えないけどさ、

こんなに頑張れたのは全部翔くんのおかげだよ。ありがとう。








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