第23話オトコノコ

ランジェリーショップに着くと、きゅうちゃんは目を細めた。

「なんか、独特だよね……女性モノの服を買う時に入るお店とはなんか違う感じというか……男子を寄せ付けない感じというか……」

ユーロビートのBGMに白を基調とした店内。

黒いマネキン数台に付けられた豪華な刺繍のブラジャーとショーツ。

店内真ん中には大きなシャンデリアが吊るされていたり、レジ横やフィッティングルームの横には下着姿の女性のポスターが飾ってある。

奥の方にはメンズラインの部屋着やボクサーブリーフも揃えてあり、カップルで行ける店になっていた。

値段もリーズナブルで、大学生や社会人一年目の人の財布に優しい価格になっている。

何より、作りがしっかりしているので、支えてくれる感、守ってくれる感が強い。

ここなら、きゅうちゃんのアレが収まるかなと思い、お店を選んだのだが……

「そうかな?何も感じないけど」

「なんか、女の子から香る甘いにおいするし……」

「女の子の匂い?」

よくわからないことをブツブツと言っているなあと思ったが、きゅうちゃんの様子がおかしくなってきている。

顔が真っ赤になり、脂汗でファンデーションがよれている。


「ん!…んうっ!」


「きゅうちゃん!?」


「無理!ボクには刺激が強すぎる!」

きゅうちゃんは一目散にランジェリーショップから出て行った。

1分も、もたなかった。

ランジェリーショップが見えなくなるまできゅうちゃんは全力疾走していった。

厚底靴でよくそこまで走れるな、という速さ。

追いかけて、首根っこをひっ捕まえる。

「どうしたの?きゅうちゃん」

「ボク、男の子なの」

「それは前に聞いたよ」

「その、あの、つらい」

「何がつらいの?さっきまで楽しくしてたじゃん」

「うー……その、お股が」

「はあ?!それがどうしたの!」

きゅうちゃんはスカートの裾をつかみ、顔を真っ赤にして腰を左右にゆらゆらと震わせている。



「………おっきしちゃったの」



「???!!!」



これは、さすがに女にはわからん。


本当にごめん。きゅうちゃん……それだけで反応しちゃう男性の生理的なもんは、正直理解できない。

それを言うときゅうちゃんが傷つきそうなので、言いたいことを飲み込んだ。

「ちょっと早いけど、カラオケ行く?」

「んぅー」



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