第10話 月子の日常2

「……さん、斉藤さん」

「ふぇ? あ、はい」

「授業中ですよ! 居眠りしない!」

「……はい」

大学にて、講義中にうとうとしてしまった。

「で、桃花という詩は桃の花がこんなに咲いているのに果実が一つもならないなんておかしいでしょう? というように、乙女の恋心を花に喩えているのです。実を結ばない恋などあり得ないということを……って、斉藤さんまた寝てる! もう!寝るなら家に帰って寝なさい!」

もう無理だった。

先生の声で寝てしまった。

「つーちゃん、今日どうしたの?」

休憩中、まなちゃんが顔を覗き込みながら聞く。

「んー、バイトきつくて」

「でも、2年続けたバイトでしょ? まさか、もう体力落ちてきたとか?」

きゃははとまなちゃんは笑うが、それに反応する体力が無いくらい疲弊してしまっていた。

「あれ? つーちゃんどした?」

「まな、寝かせてやろう。無理にかまうのはよくないよ。つー、つー、そんなに眠いなら医務室行くか、帰るかしたほうがいいよ。どうする?」

かやちゃんがゆさゆさと私の肩を揺らす。

「ぐ、ぐー……いむしちゅ……いく……」

「マジどうしたんだろうね?つーちゃん」

「今はほっといた方がいいかもね」

「前は完徹しても元気だったのに」

「まあ、そういう時期もあるんでしょ」

ヨタヨタ歩きながら背中越しにそんな会話が聞き取れたがそれに反応できないくらい眠たかった。

何故、急激にこんなに眠くなったのかはわからないが医務室のベッドをかり、3時間そこで夢も見ずに寝てしまった。


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