第7話 徹夜して昼に起きる休みの日

『休みの日っていつも何やってるの?』

 LINE交換をした次の日の夕食を食べた後に何気なくスマホを開くと蛍からLINEが来ていて思わずドキッとした。休みの日……休みの日?友達と遊ぶ約束がないなら前日は起きられる時間まで起きて昼に起きてゲームやって、風呂ご飯トイレ以外部屋から出ない生活をしている。だけど勿論そんな事は言えない。少し考えた末に絞り出した苦渋の答えを返す。

『友達と遊びに行ったりしてるよ!瀬良はやっぱ料理とか?』

『確かに甘いもの作ったりもしてるけど、部活ない日は私も友達と遊びに行ってる!』

 休みの日に友達と……この話の流れを続けるとこれはもしかしたら遊びに誘えるのではないのか?何気なく打った一文だけどもしかしたらいい方向に動くかもしれない。

『誰と遊びに行くことが多いの?松井とか日田とかと仲いいイメージがある』

 松井というのは松井渚。中学が一緒だがあまり話したことはない。どっちかと言うと距離が近いのは中二の時に松井と同じクラスだった繁だ。繁もあまり松井のことについて話すことはないからそこまで親しいという感じでもなさそうだけど。

 日田というのは日田詩乃。別に中学が一緒というわけでもないし、クラスでも話すことはないので本当に何も知らない。少し大人しめな女子だ。

 

『確かに一番話すのはその二人だね』

 そう送った蛍はベッドに寝転がりながら蛍は黙考していた。待っているのは勿論理人の返信だが、にらめっこしている画面に映っているのは渚とのトーク画面だ。

『誘ったら絶対いける!』

 そう書かれた文面を見ている。渚はずっと蛍と理人の仲がどうなるか、よく言えば応援、悪く言えば野次馬根性極まるといった具合で見守っている。LINE交換が大きなチャンスということは蛍も良く分かっている。ちょうど今友達と遊びに行く話にもなっているし、遊びに誘ったりできないだろうか?いや、でもLINE交換して次の日に、というのは時期尚早じゃないの?でも今躊躇ってしまったらろくな結果にならない気がする。寝転がっていた体を勢いよく起こして決意を固めた。


『一緒に遊びに行かない?』

 直球すぎる気がする。

『部活空いてるのっていつ?』

 遠まわしすぎるし、放送部は土日に部活なかった気がする。

『あのさ、出来ればさ、今度どこか遊びに行こうよ』

 これ位ならいいかな。理人に変って思われないかな。そんな事を考えている間にも会話は進む。それでもやっぱり休日とか友達の話からは話の中心がずれないから、今なら行ける。

 ……そう言えば昨日の白井くんは少しタイミング悪すぎたな。もう少し来るのが遅かったら朝の時点でLINE交換が出来たのに。

『あー、確かにそうかも』

 理人の友達との交友関係の話になって話の流れが少し止まった。今がちょうど誘いのメッセージを送るチャンスだ。


『あのさ』

『時間が空いてたら今度どこか遊びに行かない?結構学校では話すけど遊びに行ったことってないなって思ってさ』

 承諾の返事が来ることを願って、拒否の返事が来たとしても理人が自分の印象を下げませんように。電源を落としたスマホをポンと布団の上に投げて再びベッドに横たわる。一分位した後、通知音が鳴り蛍は素早く起き上がってLINEを見た。

『分かった、どこ行こう?』

 「やった!」


 誘うのに成功したことにやった、やったと声を上げながら横たわった状態で足をパタパタと動かす。理人が見たら卒倒しそうな光景だが蛍も、もしかしたらあまり大きな声を上げると理人に聞こえるかもしれないなんていらない事を思う。

 その後30分後くらい話し合った結果、来週の日曜日に近くのショッピングモールに併設されている映画館に今はやっている作品を見に行く、ということになった。

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