青い春を漂う

CHIKA(*´▽`*)

幕開け

プロローグ

 金魚が真っ青な空を、優雅に泳いでいる。改めて文字にして見ると変な感じがした。

 物語の入り方だと、読者の心を掴むには十分な文章だと思う。



 けれども、これは本当に起きていることなのだ。

 これはまだ夢の中だと、きっと誰もが思うことだろう。しかしこれは紛れもない現実。

 少しだけ簡単に説明をしよう。



 この町は何とも不思議なことに、水がなくても金魚が泳ぐことができるのだ。

 本当にあらゆる場所に金魚が泳いでいる。

 更に空を泳ぐだけではなく、建物も普通に貫通して泳ぐのだ。

 だからこの光景はただの日常茶飯事ってことになる。もう見慣れた光景だ。



 ちなみに、この場所ならではのルールというものも存在する。

 むやみやたらに金魚を捕まえないといった内容だ。

 これは、保育所の頃からずっと言われてきた。



 別の町から来た人たちの反応はと言うと。

 本当に泳いでいるって言って感動したりとか、無言で見続けていたりしてるけどね。

 有難い限りだよ。

 でも5年前まではあまり目立たない町だった。名前だけは存在しているような、そんな町。





 ある日のこと。

 全国を旅しているカメラマンが偶然にこの町を通りかかった。 

 その当時、彼の知名度はまだ無名に近かった。     

 何も知らなかった彼はとても驚いたことだろう。



 あたし自身も初めて見た時、つい間抜けな声が出てしまうほどに驚いたのだから。

 彼は金魚たちに心を奪われて、何枚も何枚もシャッターを切った。

 そして、中でも特に出来が良かった写真をコンテストに出したのだった。

 すると、審査員や来客から質問が殺到。



 これは合成じゃないのかと疑っている人がほとんどだった。

 何も知らない来客側の立場だったら絶対に疑っていた、という謎の自信がある。

 合成じゃないことを示す為に、彼はスマートフォンで録画していた映像を見せた。



 彼は映像技術が不器用な方でCGなんて到底に作れない。

 そのことを審査員たちは、彼がコンテストに初めて参加した時から知っていた。

 その写真が本物だと分かると、満場一致で彼の作品は最優秀賞に選ばれた。



 そんなことがあり、彼とこの町は一躍有名となったのだった。

 そこからはもうてんてこ舞い。

 色んな番組の取材班が来たり、観光客が増えたりと町は一気ににぎやかになった。

 町は町で今まで以上に観光に力を入れて色んな商品を作り始めた。

 

 饅頭やクッキーやハンカチやポストカード。それ以外にもなんとスキンケア用品まで作り始めた。

 これが凄いことにどの商品も赤字になることなく売れた。

 特にスキンケア用品は若い女性以外にも少し年配の方にも人気らしい。

 まだ使ったことはないけど、かなり評価が高いことは知っている。



 テレビではしばらくこの町の特集番組で持ち切りだった。

 それがまさかの脅威の視聴率23パーセントを記録したらしい。

 この町を扱っていた番組は全部、基本的に15パーセントを超えていたとのこと。

 それほどみんながこの町に興味があるということだろう。



 とても嬉しいし大歓迎だ。もっとみんなにこの町のことを知って欲しい。

 そう言えるのは、あのことがあったから。



 あたしがこの町に住んでいたからこそ起きた奇跡……はちょっと大げさな表現になるのかな。

 でもそういうことにしておく。少なくともあたし自身はそう思っているから

 これはそんな透海とうみ町で起きたお話。

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