第49話 キング

「なんだ!?」


 突然の出血に戸惑うフラム。それもそのはず、レックスはフラムに連打を喰らって反撃する余裕なんて無いはずだった。


「ハァ…ハァ……、やはり、お前は喰らうに相応しいぞフラム!」


 レックスは半分焼け爛れていた手斧を捨て、天を仰ぎ、そして大きく息を吸い込む。


 ゴアアァアァァァァァ―――ッ!!


 轟く咆哮は空気を揺らし、肌がビリビリするような存在感をこの地に知らしめている。


 ズドン――

  ズドン――


 大きな振動が地面を伝わってきた。それは次第に大きくなっていき、揺れで足元が不安定になるほどだった。


「スノウ! 気をつけろ、なにか来る!」


 フラムがそう忠告し、私はガンブレードを構えた。私もフラムの役に立ちたい、だからせめて自分の身は自分で守ろう、と、私は私を奮い立たせる。


「来たか、『霊装』」


 レックスは私とフラムの奥の方を見つめていた。その視線を不思議に思い、私とフラムは後方を振り返る。


 グルルアアァァァ――ッ!


 そこには、現実世界の太古に存在したとされるTレックスがいた。ヤツはズシズシと存在感のある闊歩をし、大きく発達した後脚と尻尾と、何者をも噛み千切るアギトを備えて登場する。


「本気で行かせてもらおう、フラム・カグツチ」


 Tレックスは私とフラムを無視し、真っ直ぐにレックスへと向かっていく。

 そして大きく口を開き、彼を喰らった。


「なっ……!? どういう事だ?」


 私とフラムは顔を見合せて戸惑う。同士討ちか、はたまた作戦があるのか。


 


 その答えは、Tレックスの異変によって現れた。


「『絶対王者ぜったいおうじゃ』」


 レックスのドスの効いた声が響き、直後にTレックスの身体が膨張し、パンパンに空気の入った風船のようになる。


 パァン――ッ!


 Tレックスの巨体は弾ける。肉片や骨、血液などの生物が持つであろう物質は無く、ただ身体の内側から空気が破裂したようだった。


 破裂したTレックスの中から、宙に浮いているレックスの姿が見えた。彼は着ていた服やパンツがビリビリに破けていて、歯型や擦り傷、アザなど全身に生傷が増えていた。瞳からは紫色の残光が走る。


「喰らうぞ、フラム」


 

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