第21話 山にはドワーフが居ましたわ!!

エルフさん達に交易の話を持ち掛けた所、是非にというお話でしたわ。そして昨晩巡礼者の中でエルフさん達と恋仲になった者達がこの場所に残り、ピュリファイの街と交易をすることになりました。


「まさか最初の半数である50人がこの場所に残るとは・・・。」


「エルフさん達は見目麗しい方々が多いですから。仕方ありませんわ。」


「お嬢様は気になった方は居ないのですか?」


「私は使徒様にこの身を捧げています。他の方にはなびきませんわ。」


「それでこそお嬢だ。」


幸いゴブリナさん達は全員私達に着いて来てくれるらしいですわ。どうもエルフさんの美貌の前では緊張してしまっていつもの様に振る舞えないらしいんですの。少女の様な見た目ですがやはり乙女なのですね。遠くで見ているだけで充分だと言って恥ずかしそうにしていましたわ。


「もう行かれるのか?」


「はい、使徒様の行き先が解りましたので先を急ぎませんと。交易の件、よろしくお願いしますわ。」


「心得た。使徒様の力になれるよう、神樹の実を持って信徒を増やそうではないか。」


エルフの代表の男性と握手をして別れますわ。昨晩の宴のお礼としてお守りと、森で取れた繊維で作った使徒様ローブを送っています。とても喜ばれてエルフさんが全員今身に着けていますわ。


「使徒様と合流出来たら一度この村に立ち寄ってくれ。」


「必ず!!では出発しますわよ!!」


私達は使徒様が昇って行ったのを見たという山に向かって進み始めました。


・・・・・・・


エルフの村を出発して1週間が経ちましたわ。やっと私たちは山の麓に到着しましたの。道中使徒様がお植えになった神樹がぽつぽつとありましたから、お願いして実を分けて頂きました。実を食べれば疲れも吹っ飛びいつもより早く歩けましたわ。(※気のせいです。)


「さぁ、使徒様はこの山を登って行かれました。私達も後を追いますわよ。」


ゆっくりと山を登って行きますわ。途中掛けになっていたり、何かの拍子に土砂崩れが起こったのか道が無かったりしましたが、それでも使徒様の後を追う使命を果たす為に懸命に登り続けました。


ですが慣れない山登りに私たちは疲弊し、山の中腹で動けなくなってしまいました。


「お嬢様、これ以上は進めません。一度引き返しましょう。」


「・・・そうですわね。これ以上進んでは信徒に被害が・・・・。」


ドゴッ!!ガラガラガラ・・・・・。


「おん?お前さんらどっから来た?」


山からの撤退を指示しようとした所で、私達が休憩している場所の傍に穴が開き、茶色い服を着た背の小さな人が姿を現しましたわ。


「お前さんらその格好は・・・・。空飛ぶ黒い奴に心当たりはねぇか?」


小さい人が私達の恰好をジロジロ見たと思ったら、おもむろにそのような事を聞いてきましたの。私達は頷いて返して、お守りを見せますわ。なんだか頭がぼーっとしてきて言葉が出ませんでしたの。


「ふむ、こりゃあいつで間違いないな。っとお前さんら大丈夫か?顔色が悪いが?」


「なんだかめまいがして・・・・。」


「そりゃ行けねぇ!!山病だ!!カカァ達連れてくっから水が在ったら飲んで少し体動かしとけ!これ以上山の上に上がっちゃなんねぇぞ!!」


そう言って小さな人は穴の中に戻って行きました。私達は支持の通りに水分を補給して体を少し動かします。言われた事をしただけなのに体が少し楽になって来ました。


「待たせたな。カカァ達連れて来た。」


「あんた達!!意識の無い人を優先で連れて行きな!!中に入れて体を温めるんだ!!私達が来たからもう安心だからね。気をしっかり持つんだよ。」


さっきの人が穴から出て来たと思えば、その後ろからゴブリナよりも背の低い女性達が次々と姿を現して私達を開放してくれます。私も先程指示を出していた女性に抱かれて穴の中に連れていかれました。ちょっと態勢がきついですし、その・・・私よりも大きいそれがお腹に乗ってますが・・・・。


「しっかりおし!!山病は低い所から高い所に行くと起こる病なんだ。だから今あんた達を低い場所にある私達の里に連れて行ってる最中さ。里には温かいスープと寝床があるからね、休ませてあげるよ。」


「・・・すみません。感謝します・・・。」


「なぁに、山の女は人に優しくしないといけないからね。じゃないと、あんたの胸に居る黒い神さんに怒られちまうよ。」


あぁ、ここでも使徒様が私達を助けてくれるのですね・・・。


そこで私の意識は途切れてしまいました。この方達が使徒様と御知り合いと知って気が抜けてしまった様です。


次に目を覚ました時には、苔が光りを放つ洞窟の中に居ました。


「お嬢様!!大丈夫ですか!!」


「えぇ・・・もう頭痛もめまいもしていません。大丈夫ですわ。」


「お前等!お嬢は無事だ!安心しろ!!」


ゼバスが私の横にすわっていて、安否を問いかけてきますわ。私が無事だと伝えたら、いつの間にか居たライヒが外に向かって声を掛けています。わーっという声が聞こえているので他の皆さんも無事だったようですね。


「おう、無事で良かった。」


そこに、最初に姿を現した小さな人が来ました。よく見ると服だと思っていたのはとても長い髭で、背は小さくとも大人の方なのだと解りましたわ。


「この度は助けて頂きありがとうございました。」


「なぁに、あんた達もあの黒いのに助けられた口だろ?俺達もそうなんだ。」


詳しくお話を聞くと、やはり使徒様はこの山に来てこの方達をお救いになったそうなのです。最後には目の前の男性と、私を助けた女性をくっつけてここに国を作るように言ったのだとか。皆さま使命をお持ちでやはり羨ましくなってしまいます。


「だがちょっと困った事が在ってなぁ・・・・。」


「困った事ですか?」


「食料が足りねぇんだ。俺達は山に眠ってるこういうのを掘り出してるんだが・・・・。」


そう言って取り出したのは石の中に赤く透明な石が埋まっている物でした。


「とても綺麗ですがこれは?」


「おっ、あんたもそう思うかい?これは山を掘っていると出てくる石でな。あの黒いのの胸についていた石と同じ色をしているから赤石と呼んでるんだ。他にも青や緑、黄色なんてのもあっていつの間にか俺達の間では宝の石で宝石と呼んでいる。」


確かに光りに当てるとキラキラと輝きとても綺麗な石です。宝だと言われればそう思えるかもしれません。


「これと食料を交換しようと思ってるんだが。山の下には伝手が無くてな・・・・。そこで同じ黒いのに関わった者同士。助けた見返りじゃないが俺達を助けてくれないか?」


頭を下げる髭の人。私は笑いながら彼に返答をします。


「もちろん、命の恩人ですもの。協力いたしますわ。山の麓にあるエルフの里に私たちの仲間が居ます。その人達に話を通せばその宝石と食料を変えて貰えるはずですわ。」


「本当か!!それは助かる!!」


詳しい事は私達がもう少し元気になったら詰めるという事でこの日はゆっくりと休ませていただきましたわ。


そして翌日。


「貴方達にも名前が無いんですの?」


「あぁ、種族名すら決まってないな。」


朝食の席で聞いた話に驚きました。またもや使徒様は新たな種族を作って名前を付けていませんでした。


「では僭越ながら私があなた達の種族名を使徒様にお伺いしますわ。」


「そんな事出来るのか?」


「えぇ、これを使えば。」


胸に下げていたお守りを手で包み、この方たちの種族名を使徒様に問います。お守りが輝きを放ち、そして私の頭に又一つの言葉が浮かびました。


「ドワーフ・・・・。探求する者という意味でドワーフですわ。」


「ドワーフ・・・ドワーフか!!良い響きだ。」


「えぇ、それなら私達は今後ドワーフと名乗りましょう。」


名前も決まり、巡礼者の中からドワーフと共にエルフの里に行く人たちを残しました。ドワーフさん相手でしたら、ゴブリナさん達も安心なのか何人か一緒に残る事に。


「お世話になりました。」


「構やしねぇよ。それより黒いのの行き先は解るのか?残念ながら俺達は何処に行ったか見てないからよ・・・・。」


「大丈夫ですわ。使徒様自身が導いてくれますもの。」


手の中のお守りからは、山の反対側から使徒様の力を感じます。


「なら新しく掘ったこっちから行け。反対側に簡単に出られるからよ。」


「何から何までありがとうございます・・・・。」


「気にすんな。それより黒いのに在ったらよろしく言っといてくれ。」


「それは必ず。」


私達は使徒様に追いつくためにドワーフさん達が掘った穴を通って行きます。さてこの先使徒様はどのような奇跡を起こされたのでしょうか?


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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