第13話 ドワーフ爆誕!!

「ううううう、わしは一体?」


「きゅっ!!きゅきゅ~・・・・。」


「おぉ、無事じゃったか。良かったの~。しかしお前さんデカくなったか?」


目を覚ました元土竜。黒いのは姿が変わっても土竜が生きていた事に喜び、その胸の中に飛び込んだ。元土竜はそんな黒いのを抱き締めつつも黒いのが無事だったことを喜ぶ。だが先ほどと違って大きく見える黒いのに疑問を持ったようだ。


「きゅっ?きゅ~きゅ~?」


「ん?自分の体を見ろ?・・・・ってなんじゃこりゃ!?」


黒いのが体を指さすので元土竜は自分の体のを確認し、その劇的なビフォーアフターに驚いた。体が縮み毛も無くなってしまった。髭と髪はあるが後は何かの毛皮で出来た服を纏うだけ。


黒いのを抱きとめる時に地面に落とした何かからは、自分の体の一部だという感覚が返ってくる。変化に驚きつつもこれが今の自分の体だとなんとか受け止めた元土竜は、腕から抜け出して傍に浮いていた黒いのに目線を戻す。


「これは・・・お前さんがやったのか?」


「・・・きゅ~・・・・。」


「あぁいや。わしを助ける為じゃったんじゃろ?気に病むことは無い。」


元土竜の言葉に、申し訳なさそうな顔をして鳴き声を上げる黒いの。勝手に変えちゃって怒ってるかなぁという感じの黒いのに、元土竜は気にしていないと告げる。言葉は伝わっていないが意味は通じたようだ。


「きゅっ!!」


「しかしどうするかの。この体じゃ同族なんぞおらんじゃろうし。どう生きて行けば・・・。」


「ぐばぁあ。」


「なんじゃ!?突然大口開けてどうしたんじゃ!?」


ぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷー!!


元土竜の同族が居ないという言葉に反応したのか、体の口が勝手に鳴き声を上げた後に口から大量に人を吐き出し始めた。


その数はあの黒い土竜のリーダーと取り巻きを合わせた数に、黒土竜の逃げ込んだ先に在った巣の者達も合わせて総数200人の人が吐き出された。


元土竜と同じように髭もじゃで筋骨隆々なのが男性で、女性は逆に少しだけふくよかでかなり幼い容姿をしている。だが個体差はあるものの体の一部だけがでかいようだ。なんと他よりも体の大きかった黒土竜のリーダーは雌だったようだ。こいつだけは特別に体の一部が大きかった。


「なっなんじゃこれは・・・。」


「きゅ~♪」


「ぐぁう・・・・。」


「う、うぅん・・・。はっ私達は一体!!」


黒いのの体から自分と同族だろうという人々が飛び出して驚く元土竜。黒いのは体の宝石にお礼をするように鳴き。体の口からは面倒くさそうな、そしてしばらくは寝るという意味の込められた鳴き声が返って来た。そして黒土竜のリーダーだった個体が目を覚まして辺りを見回す。


食べられたはずの同族が、それも巣に居た者達までこの場に居る事に驚きながらも、自分達の中に在った“何か”が綺麗さっぱり無くなっている事に気が付く黒土竜達。そして、“何か”を消し去ってくれた黒いのの姿を見た元黒土竜達は、自然と膝を着いて手を組んでいた。


「あぁ!!貴方様が私達を救って下さったのですね!!」


「「「「「「「「感謝します神よ!!」」」」」」」」」


「きゅ~?」


突然の元黒土竜達の行動に首を傾げる黒いの。ちょくちょくある場面だが言葉が通じていない黒いのには何をしているのかが解らなかった。


「お前さん神様じゃったんか?」


「きゅ~きゅ~。」


目を覚ました元黒土竜達が、黒いのを神と崇めて祈り始める様子を驚きの表情で見ていた元土竜。元黒土竜達のそんな様子に元土竜は黒いのに神様なのかと問うが、言葉は分からずとも心が通じている黒いのは違うと首を横に振って答えた。


「神の御付きであるあなた様にも大変なご迷惑を・・・。この償いは私の体で!!さぁこの身を好きになさって下さい!!」


「「「「「「「「女王様ナイス判断!!祝いじゃ宴じゃ婚姻じゃー!!」」」」」」」」


「ちょっと待ってくれんかのぉ~・・・・。」


「きゅっきゅっ♪」


そんな様子を見ていた黒土竜のリーダーは元土竜にもきちんと謝罪した上で、彼に嫁ぐと言い始めた。


元黒土竜の取り巻き達は神様である黒いの(勝手にそう思っている)の御付きで、同族になった元土竜と友諠を結べば黒いのに仕えられると思っていた。


そこにリーダーの体で責任を取る宣言である。取り巻き達は黒土竜のリーダーが、ガチ目に元土竜に一目惚れして謝罪を理由に番になろうとしている事に気が付いていた。黒いのを信奉する目とは違って、元土竜を見る目がハートになっているリーダーを取り巻き達は応援する事にしたのだ。


やんややんやと騒ぐ取り巻き達、そんな様子を見て黒いのもぴょんぴょんと楽しそうに飛び跳ねていた。困惑しているのは元土竜唯一人である。


元土竜に詰め寄るリーダーを何とか黒いのと2人掛かりで押し止め。(かなり押しが強くて元土竜1人じゃ抑えきずに黒いのに助けを求めた。)今後の事は明日話し合うとして眠る事にした元土竜達。元黒土竜に案内されて巣に入り黒いのと元土竜は一緒に寝ていたのだが・・・・。


深夜、何やらゴソゴソと動く音で目が覚めた黒いの。黒いのは何時の間にか天井近くまで浮遊して寝ていた。天井からはリーダーの巣として掘られた穴の全体が見えている。


そして、グースカ寝ている元土竜の傍には何時の間にか元黒土竜のリーダーの姿が在って・・・。


「きゅ~?」


また元土竜に何か悪い事をするのかと、寝ている振りをしながら2人の様子を見守る黒いの。するとリーダーはおもむろに着ていた毛皮を脱ぐと、するっと元土竜の寝床に潜り込んでいった。


「きゅぅ~?」


すーっと降りて行って様子を確認する黒いの。そこには未だ大きないびきを掻きながら寝ている元土竜と、その横に裸で寝転がっているリーダーの姿があった。


「あぁ神様。今夜だけはお見逃し下さい。私はこの人を愛してしまったのです。この胸の高鳴りはこの人と結ばれなければ止まりません。この思いを遂げなければ私はどうにかなってしまうでしょう。だからどうか、どうかお目こぼしを・・・・。」


「きゅ~?・・・・・きゅっ!!」


「あぁ神よ、感謝いたします。ふふふ、お許しも出たのでもう少し攻めてみましょうか・・・・。」


「きゅきゅきゅ~。」


近くに寄って様子を見ようと動いた黒いのはリーダーに見つかってしまった。リーダーは黒いのに頭を下げながらもなぜこのような事をしたのか理由を述べた。


が、言葉が通じない黒いのに意味は無かった。首を傾げながら頭を下げるリーダーを観察する黒いの。これだけ騒がしいのに未だいびきを掻いて寝ている元土竜は大物なのだろうか?それとも鈍感なだけだろうか?


じっとリーダーの顔を見つめる黒いの。その真剣な表情に感じ入ったのか、それとも瞳の奥に燃える愛の炎を感じ取ったのか定かでは無いが、悪い事はしないだろうと一緒に居ても良いと頷いてリーダーに返した。


リーダーは神である黒いのから“そう言う事をしても良い”とお許しが出たと勘違い。本来なら裸で添い寝をするだけにして反応を見るつもりだったが、その先まで実行しようとゴソゴソと動き出す。


黒いのは何やら見ちゃいけない物な気がしたので穴から出て、巣の広場がある天井で寝る事にしたのだった。


黒いのが広場の天井で寝直し始め、きゅぴー、きゅぴーといびきを掻いている頃。黒いのが出て来た穴から女性の嬌声と男性の悲鳴が響いた事に黒いのは気が付かなかった。巣の広場の天井はかなり高くて音が聞えなかったのだ。黒いのを呼ぶ声に気が付かず、黒いのはそのままぐっすりと眠るのだった。


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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